
「ビジポコ編集長・河上に聞いてみよう!」のコーナーです。
ビジネスは、設計が大切です。もしかしたら偉大な起業家というものは、直感でビジネスを構築できるのかもしれません。ただ、起業は普通の方でもできますから、再現性が必要です。そうしないと、いつまでも新規事業への進出もできませんし、がんばってきた努力を人に伝えることすらできなくなってしまいます。
では、ビジネスの設計とはどのようなものなのか。“おにぎり“を例にしながら、確認していきます。結論を先に少しだけ書くと、『「おにぎりを食べて、テンションが下がらない」は、それだけでお客様にとっては買う価値がある』と編集長・河上はいうのです。
もくじ
おにぎりとビジネスパーソンの昼休み
おにぎりはとても美味しいです。自分で握ることもあるでしょうし、今はやりのおにぎり専門店で買うこともあれば、コンビニで買ってきてオフィスのデスクや、昨今のご時世柄なら自宅で、お昼休みに食べることはとても多いのではないかと思います。
そこで、
「冷えたおにぎりでパッケージもペラペラだと、少しテンションが下がるといいますか、なんだか寂しい気分になりませんか?ならない人もいるかもしれないですが、知的生産を価値としている方には、その昼間の冷めたおにぎり、というのが意外と生産性を妨げることがあります。人間というのは置かれた環境から大きな影響を受けます。おにぎりがランチの環境を支配するとまではいいませんが、冷めたおにぎりを食べるだけで、少し気持ちが下がって、それが仕事の質に(間接的に)関わるとしたらどうでしょうか。」
というのです。とことん知的労働者でありたいなら、おにぎりひとつにも気をつけて、どうせならテンションが下がらないおにぎりを選びたいところ!
コンビニおにぎりの本当の価値を考える
これは、コンビニ事業者側から見ると、「食べていてもテンションの下がらないおにぎり」を開発する、という話につながるのだそうです。基本として【機能面が最低限を満たす】(“美味しい”は当たり前)として、忙しいビジネスパーソンの昼休みのランチに買われがちだということ。それをリサーチの結果つきとめ、
コンビニでおにぎりを買う=急いで食べたい=忙しいビジネスパーソンに需要がある
ということころまで掘っていく。リサーチして需要の手ごたえを感じると。
忙しいビジネスパーソン=テンションが下がらないおにぎりを潜在的に求める人、であり、知的生産やアイデアのヒントとまではいかなくとも、思考の邪魔をしないプロダクト(おにぎり)が求められている、と河上はいうのです。おにぎりひとつでそこまで考えるなんて!びっくりですね。
すると、パッケージを少し洗練されたものにしたり、冷えた状態でも美味しいおにぎりを開発したり、とやるべきことが見えてきます。
おにぎりと価値と値上げ
「そこまでやるか」
と思われるでしょうか?私・ライター藤田はそう感じました。
ということは、そこまで研究開発していると、”コスパに合わない、100円おにぎりでは費用対効果が合わない”を意味します。
では、何をすべきか。それはシンプルに「値上げ」だと河上はいいます。180円にすればいいと。ただ高くするだけだと、「お金が欲しいだけ」と強欲だと誤解されてお客様離れを起こします。よって、単に価格を上げるだけでなく、価値をちゃんと提供すればよいのだそうです。
価値があれば、お客様は喜んで高いお金を払ってくれるのです。自分自身を省みても、価値があるものはむしろ、「お金を払って良かった」だけでなく「もっと、お金を払わせてください」とすら思います。「もっと、お金を払わせてください」とまで思ってもらえたら、それはもう立派なリピーターであり、ファンであると。そうした方をどれだけ増やせるか、というのが、結局は商売の明暗をわけるのではないでしょうか。
「そこまでやるか」から、「そこまでやらなきゃいけない」へ
100円のおにぎりひとつに対して、「そこまでやるか」と思うのであれば、方向性を変えて「そこまでやらなきゃいけない」と考えを変えてみるのはいかがでしょうか。いや、新規事業で勝つためには「そこまでやらなきゃいけない」のだと河上はいいます。
もはや、世の中はすべて価格で比較されます。金額以外の優劣がつかない世界では、すべてがコモディティ化(飽和)していくのです。そんな世界の中で価値を創出していくには、「似て非なるもの」であることが何より大切だと教えてくれました。
実際に、コンビニのおにぎりを食べてみましょう。「ちょっと油くさいな」とか、いろいろ考えることは出てきます。たった5分。忙しいビジネスパーソンがお昼に食べるたった5分を、最高のものにするために、何ができるか。「そこまで考えないと勝てない」の意味はそこにあると河上は指摘しているのです。
ペルソナ(想定する人物像)をさらに深堀りする
では、この話をさらに発展させてみます。
ビジネスパーソンがランチするたった5分。なぜ彼(彼女)には5分しかないのか。ビジネスにおける想定人物つまりペルソナを立てて、深堀りしていきます。
「彼(彼女)は忙しいからです。なぜ忙しいのか。それは会議がたくさんあるのと、物事を考えるための、思考の時間が長くて5分しかお昼に取れないと。昼に15分だけ時間が取れたとき、彼は5分でコンビニへ向かい、パソコンを閉じてパクパクとおにぎりを食べます。もしかしたら、それはふと思いつくための5分かもしれないですよね。」
そこでおにぎりが彼/彼女の【お役に立つ】にはどうすればいいか。ランチタイムに欠かせない「鮭・コメ・味噌汁」を、おにぎりひとつでどう再現するか、が課題となります。
じゃあ、「レンジでチンするおにぎりはどうだろう?」とひらめいたとき。
「これまでは、オムライスおにぎりやチャーハンおにぎりといった、単純に温めるとおいしくなるから、という理由で、レンジでの温めが推奨されていました。つまり、機能面で押していたのです」
「でも、白飯のおにぎりだって、温めていいはず。温めておいしい白飯にあうおにぎりの具材とは…油とは…というところから新規事業の開発ははじまります。すると、「しっかり噛んで食べるおにぎり」なども開発できることとなり、さらに思考のバリエーションは広まります。」
「これこそが、新規事業の根幹であり、とことん考えねばならない部分です。」
お茶を抱き合わせで売る、セット買いで安くする、なども大切ではありますが、それらはあくまでマーケティング上の施策です。新規事業を考えるとき、「大切なのはとことん考え抜くことであり、考え抜くこととは、「そこまでやらないと勝てない」と腹をくくることではないでしょうか。」と河上はいいます。
そして、【同じおにぎりでありながら、「似て非なるもの」になるとき、新規事業の勝利が見えてくる】のだそうです。
あたらめて考える、プロダクトの価値
価値とは、「役立つ」のことだと、香水と価値の話でお伝えしました。本当に役立つとは、相手のためを思い、生活と仕事の質をよくするお手伝いのために、何ができるかとことん考え抜くことだと編集長より学びました。
前提として「美味しい」という機能面で十分であることは大切です。ただ、機能と価格が飽和した時代では、おにぎりひとつとってもとことん考え抜くことで、新たな価値を創出できるのです。
新規事業で勝つために、とことん考え抜きましょう!
買っていただくお客様に、おにぎりを食べながら新しくひらめいていただくため、お昼のたった5分を、テンションが下がらないどころか貴重な時間にしていただくため、考え抜く。そうした姿勢が必要になってきます。
今回はおにぎりから新規事業を考えてみました。この話が読者様のお役に立てれば幸いです。