
ビジポコ編集長に、事業の相談をしてみよう!のコーナーです。
「新規事業をポコポコ生み出せる会社になりたい」
という、コンサルタント河上のクライアントのつぶやきから誕生した当サイト『ビジポコ』。その名の通り、ビジネスをぽこっと生み出すため、ビジとポコでやって参ります。
もくじ
ランキング1位を取ったウニ醤油とウニ塩
私ことライター藤田の両親は北海道でエゾバフンウニの加工をし、築地市場(現在は豊洲市場)に卸しています。2012年のことでしょうか。今から10年ほど前です。極めて良質のウニですが、加工すると多少あまります。そこで社長である母親が、ウニ醤油を開発し、有楽町にある地場ショップに出してみたのです。
するとショップのルーキー(新着)ランキング1位となってしまったのです。次にウニ塩を出すとそちらもランクイン。日本最強グルメの頂点・北海道の物産で、狭い地場ショップといえど何千点も新商品があるなかでの1位。次の商品も1位。すごいことです。
そこで娘の特権を生かし、秘訣を母に聞いてみました。すると
「わからない(^^;)」
というのです。
再現性がない、科学的な経営ができていないと、次期後継者予定の藤田はプンプンでした。
ただ、場当たり的に出してみて、一度ならず二度までもランキングを制覇したことは、とても大きな事件で、何らかの才能つまり「舌」が関係していることは間違いないと思われます。
そこで、サイトオーナーであるコンサルタント河上に相談してみました。たくさんの分析と思考のヒントをいただいたので、その学びを今回はお届けします。
再現性とアートの話
まず「再現性がないビジネスは、もはやビジネスではなく、アートの世界です」と河上はいいます。
「仮にウニ醤油とウニ塩の1位ランクインがアートならば、もはや何がうまくいくのか分析すること自体が無駄になる」とすらいうのです。
芸術の世界ですから。そして、アートには爆発的に売れる側面がある一方で、仲間ができないという孤独な職人の世界なことがわかります。好き勝手やっていたら、仲間はできないのです。
ウニ醤油とウニ塩は、確かに美味しいのかもしれないですね。ただ、北海道には美味しい食べ物はとてもたくさんあります。なぜ、そのときウニ醤油とウニ塩が売れたのか、が今回のテーマです。
味付きの醤油という市場がもともと存在した
引き続き、ビジポコ編集長・河上は分析を続けます。伝聞だけでここまで分析できるのがすごすぎる!
「商品はウニ醤油。つまり、もともと消費者はスーパーなどで、『卵かけご飯専用の醤油』などの『味付き醤油』があることを知っていたことが前提となります。つまり、味付き醤油の市場がもともと存在しました。
塩も同様です。スカイツリーのふもとのショッピングモール『東京ソラマチ』には、塩の専門店があるぐらいです。みなさん、塩についても味付き塩というものがなんとなくあることを知っており、味付き塩の市場は存在したのです。
そこで、インパクトのある売り方をしたので、爆発的に売れたのだと思います。」
塩350円(当時)という驚くべき価格設定です。
そりゃあ、売れますよね。
ランキング1位をとる方法
このウニ塩350円という価格設定は、実は母親の自己評価の低さを表しているのでは?と藤田は考えます。つまり「別に売れないだろうし、こんなもんやろ」という価格。
「価格をみて、消費者は驚き、手に取ってしまったのです。」
「味付き醤油や味付き塩の存在をうっすら認識している消費者が、北海道のグルメというお墨付き(ブランド)のある店で、350円という価格に、驚き、買ってしまったと、それがランキングに上がり、また売れるサイクルとなって、1位に輝いたのではないでしょうか。
はからずもランキングをハックしてしまったのではないか」
とコンサルタント河上はいうのです。
商品の質以外の部分で「なぜ売れたか」を考える
ここで、大切なことを教えてもらいました。
試食ができない地場ショップ、また、ハイリスクな試食がNGなコロナ禍、そしてリモートが当たり前になりオンラインで売り買いも当たり前になってしまった今、【「美味しい」を価値として主張しても、あまり差別化にはなりません】ってことです。
「美味しいというのは、当然の前提であり、試食ができない以上は信じてもらうことがなかなかできないのです。なぜなら、今の時代、みんなが「美味しいですよ」というからです。みんな美味しいと主張する中、私たち(消費者)に何を基準に選んでもらえばいいのでしょうか?
単純に大小を比較できる値段でしょうか?そりゃあ、350円にしたら売れるとは思いますが、企業としてそこはコピーできないですし、コピーしたいとも思いませんよね。」
「売る」「買っていただく」と向き合う
私たちが何か事業を考えるとき、もっとも大切になってくるのが【売る】という行為です。売るとは、買っていただくお客様と向き合っていくことだといいます。さらにコンサルタントの河上いわく、
- 買ってくれた方
- 買わなかった方
- 手に取って戻して買わなかった方
に「なぜ買わなかったのかお声がけする」がもっとも消費者の見えざる本音に向き合いやすいとのこと。
今回は、見えざる本音に似た概念として、『デザイン思考』があると習いました。
デザイン思考の詳細はまたの機会に譲りますが、「お客さんに話を聞きに行こう」が大切な行動指針としてあるそうです。
聞かれると、人間はなんとなく言語化してしまうものです。
- 手作りのパッケージの安っぽさをなんとなく感じた
- まだ家に醤油も塩もたくさんあるからなんとなく買わなかった
- すぐに食べられる製品を求めていたからをなんとなく買わなかった
など、たくさんヒントが出てきます。
話をすると、なんとなく教えてくれるものです。その際の「なんとなく」を深堀すると、より次の商品開発に生かせるのではないでしょうか。
それこそが、藤田が母親に求め、当たり散らした、「再現性」そのものです。
アートは好き勝手やるしかない
しかし、塩350円という値段は驚きで、「そりゃあ売れる」「ランキングもハックできる」という感じですよね。ただ、これは繰り返しになりますがアートの領域なので、コピーしたくてもできません。何より、企業としても儲けを度外視しておりあまり良い企業態度ではないと藤田は思うのです。
では、シンプルに値上げすればいいのでしょうか?自社のブランド認知を広げた後、値上げを?話はそう簡単ではないと考えられます。やはり、アート性と再現性は、どちらも必要です。そして、味(美味しい)以外の部分で、再現性が必要だということがわかりました。
今度は『北のハイグレード食品』を狙う!?
ここにもまた、稼業独特の事情が絡んでおり、次の原稿へのヒントを書きますと、社長である母はランキングの次は『北のハイグレード食品』という北海道経済部が主催する認定食品として選ばれたいと奮闘しています。
北のハイグレード食品は、「特定の誰か(偉い人)」に選ばれる必要があり、市場を制覇するパターンのランキングを取るのとはまた勝手が異なってくるのです。そこで、コンサルタント河上の助言の元、勝因分析も自己分析もせず徒手空拳でアーティスティックな仕事をするカーチャン社長にアドバイスを実施しました。その結果、果たして、どのような選択をするのでしょうか。