
こんにちは、藤田です。
今回は、ビジポコの藤田ではなく、北海道のエゾバフンウニを売るウニ屋の娘・幸子として、学びをお届けしたく思います。
今回は、「商売における嘘」について。
「嘘はいけませんよ」「うちは誠実にやってますよ」というだけのつまらない話ではなく、その一歩先を行く話をお届けしていきます。
ウニの形を保つためのミョウバン
ウニというのはですね、みなさんもお寿司やさんで食べたことがあると思うんですが、ふにゃふにゃしているけれど、形がちょっとだけありますよね。ウニというのは放置していると形がなくなって溶けてしまうんですね。なので、ミョウバンという薬水につけます。
ミョウバンは、あく抜きや煮崩れの防止につかわれる、すぐれた塩水で、まあ塩なんですが、同時に薬品というか化合物であるのは確かですね。つまり、ウニとして、食卓に上がるものはすべて、「加工品」という扱いになっちゃいます。
ウニは加工品なのが普通です。というか、ミョウバンにつける以外の処理はないから。
『無添加ウニ』って何ですか?
一方、『無添加ウニ』という商品が世の中に存在します。
ウニは放置するとドロドロに溶けるので、「無添加のウニ」は論理上ありえないのですが、無添加ウニは、インターネットでたくさん売られています。
ミョウバンに本当に一瞬だけつけて形を整え、無添加でござい、として売ってるわけです。一瞬だけつけているので、厳密には添加していますし、そもそも無添加はできないのですが・・・。
いってしまえば嘘(フィクション)なわけですが、無添加ウニを、あまり違いのわからない人や、わかっていない人、自然志向の方に売って、儲けている人もおられると。無添加ウニって高く売れそうじゃないですか。
ウニの色味の話
高く売れるといえば、色鮮やかで形が整ったウニは高く売れます。
やはり色味がいいと、食べる気になりますし、新鮮だと感じますよね。
で、基本的に北海道は、土地が開発されてなくて自然豊かで、ロシアの北方領土と近いので、さらに自然がたっぷりあります。海は栄養豊富で、海産物も最高ですよね。
加えて、ウニは昆布を食べて育つのですが、ロシア人はウニも昆布も食べません。利尻昆布というブランドもあるとおり、北海道はとにかくグルメが最高。ウニも色鮮やかで美味しそうです。
しかし、過去には、「古いウニをウコンで染めて売ろうとして人がいた」そうなんです。ウコンは黄色の染料としても広く使われ、鮮やかな黄色をしているので、染めて売ったら売れるんじゃないか、と考えた悪い人がいると・・・。
まあその人の企みは、速攻でバレて、退場を食らったそうですけれども・・・。
商売における嘘
で、この話を、ビジポコのサイトオーナーであるコンサルタント河上に話してみました。
ありきたりな「商売で嘘をつくのはダメですね」との話をした私に対し、河上は
- “ばえたい”インスタグラマー
- プロの料理研究家や、クックパッドに投稿したいアマチュア料理研究家
に対して
- 染めたウニをジョークグッズとして売る
というのはどうか、と提案してくれたのです。
『あえて黄色く染めたウニ』は、ウニの専門家からしたらありえないわけで、逆にいうと、プロの思考では及ばない範囲の考えではあります。本職であればあるほど、こういう話(染めたウニをジョークグッズとして売る)は、みえなくなるのです。
“映えたいあなた専用ウニ“として、写真を比較すると、一目瞭然だというプレゼンまでしてあげれば、買ってくれるのではないか、と。
『役立つ』を売る
これが、河上がいう「仕事とは役立つを売る」ということなのかと、膝を打ちました。ストンと腹落ちした気がして、「美味しいを売ってはダメ、役立つを売らないと」というアドバイスの意味がわかった気がしました。
- 映えたい私をサポートする
- “料理を頑張っている私“をサポートする
ということです。
ずっと私は「美味しいを売る」→「美味しいは試食ができない今、口コミしかない」→「口コミをどう作るか」ということばかりに執心していましたが、そもそも「美味しいを売らない」ことが大事だったのです。だって「美味しい」は伝わっていかないから。
試食ができないコロナ禍で、「美味しい」を売ろうとすると、価格競争しかなくなります。価格は数字で比較して伝わりやすいからです。ただ、それもよくない。そうなると、そもそも「売る」とは何か、そして「役立つ」とは何か、というところから入っていくこととなります。
商売を学んでいく
――商売は「役に立つ」を売る、決して「美味しい」を売らない――
これはとても大きな学びとなりました。頭ではなんとなく理解していたものが、ストンと腹落ちして、自分ごとになった気がします。
ウニ屋というのは、実はコモディティ化(飽和)した商売です。都会の人にとっては、ウニやなんて珍しいかもしれませんが、機材が不要でかかるのは仕入れと人件費だけなので、中には、社長がウニを割って、あまり腕のないパートさんを低時給で雇い入れて詰めてもらい、“そこそこの品質“として卸している業者さんもいます。
拡大志向がなく、自分たちが食べていける分を稼げればいいと思う人にはそうしたやり方もあるのです。一方、組織でやりたい人にとっても、なかなか面白い商売だからです。
「コモディティ化した市場環境で、どうプロダクトを磨いていくか」は、グローバル環境が強制的に遮断されたコロナ禍で、どのビジネスパーソンにとっても外せないテーマではないでしょうか。
プロになればなるほど、「嘘はダメ」というたこつぼ話で終わってしまう。しかし、役立つを売るという発想になると、世界が違って見えます。
これから、ウニ屋の娘として、必死に学んでいきます。「美味しいを売ろうとした」かつての私のように認知の歪みと思い込みと偏見を取り除き、コモディティ化した市場を勝ち抜いていきます。その学びをビジポコで発信していきますので、「ウニ屋のグロース物語」をどうかお楽しみに!