宗教は現代でもっとも成功したマーケティング

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ビジポコ編集長・河上泰之に聞いてみよう!のコーナーです。

 

「新規事業(ビジネス)をポコポコ生み出す会社になりたい」との願いからつけられたビジポコ。ビジネスをポコっと生み出すべく、ビジ(真面目)とポコ(ユーモア)を組み合わせながらやって参ります。

 

さて、今回は個人的な相談です。ある日、夫が突然クロムハーツの180万円もする指輪を買ってきました。もちろん自分(夫)用です。気絶しそうになるライター。うっとりと指輪を見つめている夫・・・。なんとしてでも元を回収すべく、学びをお届けして参ります。ラグジュアリープロダクトの価値とは・・・?

 

 

自ら輝く禍々しい指輪

 

子供の頃、親や教師や大人に怒られるとき「何でそんなことしたんだ!」といわれませんでしたか? Whyで問うているのですが、実は問いかけになっていなくて、ただ単に責め立てるだけのフレーズです。本当に理由を聞きたいのであれば、声のトーンを変えて「何でそんなことをしたの?」と問いかける必要があります。

 

180万円の指輪を勝手に買ってくること。しかも自分用に。これは普通だったらかなり夫婦関係にヒビが入る一大事件なのですが、我が家には子供がいないので、貯金が減った程度ではあります。しかしここで怒っておかないとどんどん調子に乗ることは間違いないので、落ち着いたトーンで聞いてみました。

 

「何でそんなことしたの?」

「かっこいいから」

 

シンプルな答えです。さらにその感情に寄り添うべく、指輪を見せてもらいました。すると、デザインが大胆に施され、緻密な構造になっており、中に入っているダイヤモンドのカッティング技術なのか、自ら輝いて見えます。

 

何かが輝くには、光の反射である場合が多いと思いますが、180万円のクロムハーツの指輪は、指輪自ら輝いているのです。精巧なドクロが禍々しく、言い様のないオーラを放っており、映画『ロードオブザリング』よろしく、今すぐ捨てに行きたくなります。

 

180万円の指輪の価値は何なのか。

 

冗談はさておき、180万円の指輪の価値とは何なんでしょうか。

夫は「かっこいいから」しかいいません。

 

20世紀初頭の成金たちの消費を批判的に『有閑階級の理論』で書いたソースティン・ヴェブレンによりますと、貴族的趣味を持つ現代人のブローチは、古代の野蛮人が捕ってきた敵のガイコツを自分の家の軒先に飾るのと同じとのこと。顕示的消費です。

 

つまり、夫は「これだけの禍々しい指輪をはめられる自分は、狩りがうまくて戦いに強い古代人と同じぐらい、強くてたくましい男である。指輪はその証明だ」と感じ、そこに価値を感じているのかもしれません。

 

マーケティングとは信じる心に近い

 

野蛮人の夫はさておき、現代において売るとは、そして買うとは何か。

それは高額品になればなるほど「信じる心」に近いとビジポコ編集長の河上は言います。

もっとあけすけな表現をすると、「宗教は現代でもっとも成功したマーケティング」ということです。

 

宗教というと、ぎょっとするかもしれません。ただ、三大宗教かカルトっぽい新興宗教かでも違います。「新規事業において売る行為が健全に発展するとビジネスで、非健全的に発展するとカルト宗教になってしまう」と河上はいいます。

 

【売るという行為や新規事業が】

健全に発展する・・・ビジネス

非健全に発展する・・・カルト宗教

 

たとえば、オウム真理教はとてつもない傷を日本社会に与えましたが、組織を拡大していく過程で、教祖の死刑となった麻原彰晃は、「あぐらを組んだままジャンプができる」というだけで、信者を獲得していったと河上はいいます。

 

あぐらを組んだまま縦に少しジャンプするという行為は一見するとできそうでやってみると難しいです。それができた麻原たちは1万人にその写真を見せ「超能力です」と解説すると、1人ぐらいは全財産を放棄して入信してくれます。それが浄財として彼らの資金源となったのだと。

 

自分自身を信じてもらうには何が必要?

 

何がいいたいのでしょうか。つまり「成果をちょこっと見せると、信じてくれて売れる」ということなのです。こうした手段の乱用が、Before→Afterの写真を見せて売る化粧品広告の氾濫などにもつながります(ビフォーアフターの写真掲示によって売るのは違法な場合があります)。

 

成果を見せること、変化を提示することが、価値の源泉であると、宗教家は直感で知っているのではないかと河上は指摘します。

 

確かに女性としてちょっとだけお高めのコスメやボディケア用品を買って使っては悦にいっていることがありますが、その手のバス用品も信仰心に近いものがある気がします。ブランド側がどのように世界を作り信じる心を広げていっているのかを研究しても面白いのではないでしょうか。

 

ネックレスではなく指輪なのがポイント。見えるから

 

夫が勝手に180万円の指輪を買ってきたーー

この事件を編集長の河上に報告したところ今回のような話となりました。さらに「ネックレスではなく指輪なのもポイントなんでしょうね。ネックレスは胸元にぶらさがるので見えないけど、指輪ならいつも見えるので楽しめるし」と考察してくれました。

 

見える。いつだって価値を感じられる。そうしたパワーが、180万円の指輪にはあるのかも!

 

夫が勝手に買ってきたことについて、妻として納得しているかというと微妙です。しかし夫は「別に相談しなくてもこれぐらいさらりと買えるようなレベルのビジネスパーソンになりたい」とも思っているのかもしれません。

 

ちなみに、今回も学びを得意になって夫に話し、編集長の受け売りで「ネックレスではなく指輪なのがポイントだ!」と得意げに指摘したところ、、、

 

「ネックレスもあるよ~」

 

との返事とともに、別のアイテムも出てきました。気絶どころか後ろにひっくり返って頭を打ちそうになりました。信じる心とは本当に恐ろしいものです。オチがついたところで、今回はこれで終わりです。

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ライター藤田は、ウニ屋の娘です。創業者である母親が国の専業主婦1円起業枠でゼロから立ち上げた北海道根室市のウニ屋の娘で、ディスカッションを楽しく学びある記事に仕上げます。

 

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