
こんにちは。ビジポコ藤田です。
私はウニ屋の娘なのですが、商売にはいろいろなことが起こります。
無添加ウニだと虚構を売りキャバクラで豪遊する競合。「コープで売ってあげるんだから」と値下げを強いる生協。コロナで大打撃の食品業界に、どんどん新商品が出てきて埋もれる有楽町どさんこプラザと、密を避ける時代にガラガラの羽田空港へ出店するどさんこプラザ羽田空港店。ふるさと納税でご注文されるお客様にも喜んでいただきたいし、新商品を開発して「北のハイグレード食品」にだって選ばれたい。
そう今回は、新商品開発の話です。
100万円かけて工場の台所を改装し、売れる商品を新しく作ります。「北のハイグレード食品」には選ばれるのでしょうか。何を開発したのでしょうか。売れるのでしょうか。
アイデアに悩む私たち母子に、ビジポコ編集長のコンサルタント河上は、一体どのようなアドバイスをするのでしょうか…。
もくじ
新商品開発なんてしたことないよ!
新商品の開発をしたことがある人は少ないのではないでしょうか。でも、個人事業でも大企業の一部門としてでも、新規事業を考えたい、考えなくては、という思いをいだくことはあるはず。大げさにいえば、すべての商売人・ビジネスパーソンにとって「圧倒的に儲ける」という使命が課されている、と藤田個人は考えるからです。
「台所を100万円かけて改装したで~ウニの新商品のアイデアなんかないか?」
と聞いてくる母に対し、とりあえず私は孫正義氏が考案したとされる伝説の「アイデアバンク」メソッドで考えてみました。孫正義社長は大学留学中で勉強が忙しく、考える時間が限られている中、“単語帳”を2つ用意して、身の回りのあらゆるワードを書き込んで、ふたつの単語帳をランダムにかけあわせ、かけあわせたものを新商品として開発できるか試したのです。
孫氏は実際、アイデアバンクで「音声付き翻訳機」を考案。開発してシャープに1億円で事業売却し、それがソフトバンク企業のタネ銭になったといわれています。
私は単語帳に冷蔵庫の中のものを中心に、食品を書き込んでみました。「牛乳」「漬物」「たまご」「アイスクリーム」「人参」「塩」「しょうゆ」「マヨネーズ」…。それらをウニと組み合わせて、なんとなくよさげなアイデアをかーちゃんにメッセージで送りました。
「ウニ塩」→作った
「ウニしょうゆ」→作った
「ウニアイスクリーム」→?
「ウニマヨネーズ」→?
どれもピンときません。母は「ウニマヨネーズか…ちょっとありやな」とはいったものの、作っている気配はありません。結局、出来上がったのはまず有楽町どさんこプラザでルーキー1位を取った「ウニ塩」「ウニしょうゆ」そして北のハイグレード食品という北海道経済部の役人が選ぶ認定食品を狙う「珍味のウニ味」でした。
酒飲みをターゲットに珍味にウニ味をつけるというのは、意外といいアイデアかもしれません。しかし、アイデアはここで詰まってしまいました。
コロナ禍での食品業界の売上は・・・?
そうこうしている間に、コロナ禍になってしまいました。国内の食品産業が大ダメージを受ける中、不思議とコロナ当初からウニだけは無傷だったのです。そこそこ高額品であることや、toB(高級お寿司屋さん向け)がだめでも、toC(ふるさと納税を中心とした個人への販売)がとても好調だからなのでしょうか。
カーチャンにきいても「わからん」といいます。「自分の商売のことなのにわからんはないやろ」と困っていたのですが、昔からカーチャンは「わからん」が口癖なのです。夫によると、「みんな引きこもっているから自宅で美味しいものが食べたいんでしょ」「わからんというのは説明がめんどくさいんでしょ」とのこと。そうなんでしょうか。
そして、コロナ禍まっさかりの2021年3月。私はビジポコの編集長河上泰之と出会います。
ビジポコのメディアを立ち上げていく過程で、ウニ屋の新規事業の悩みを何気なく相談したところ、デザイン思考を通じてアドバイスをもらいました。
デザイン思考による新規事業の創出メソッド
編集長・河上は延々と考えたり、アイデアについて話したりすることが好きだそうです。
「美味しいを売らない、役立つを売る」
といいました。私はそれをメモして原稿のアイデアのタネにはしたものの、役立つの意味がまだいまいちわかっていません。だって「美味しい」は価値じゃん。価値があるものは売れるんでしょう???試食してもらえばいいの?みんな「美味しい」っていうよ?美味しいと感じるんだから役立ってるんじゃない?
「役立つ」を理解しない私に、河上はGoogleで「ウニ レシピ」と検索し、結果をみせてくれました。
・アボガドのウニ和え
・煎りウニ
・生うに温泉卵
・ウニの卵焼き
・いかウニ丼
・クリームチーズうにみそ
Etc
日本中のみんなが考えたオリジナルのウニレシピがGoogleに並びます。
デザイン思考では、そこでこう考えるそうです。
ウニを食べたいときってどんなとき?
私たちはときどき猛烈に和定食的なものが食べたくなる。
和定食には何が必要か。まずコメ。そしてシャケ。味噌汁は飲んだ方がいい。これで最低限の鮭定食が完成。
猛烈に食べたくなる和定食の中で、マストな立ち位置(鮭)になるのか、それとも副菜でいくのか。レシピで検索した結果をみると、ポジションとして副菜が多そうだ。
●だし巻き卵は、少し足りない日に
●ウニ好きの子供のために、誕生日の一品として
私はアイデアバンクで食べ物を組み合わせていましたが、シーンでカバーすると。
レシピをヒントに「ホタテウニソテー」が浮かびます。ウニは副菜としての位置づけが多そうなので、ウニにビールをセットで売ってはどうか。そもそもウニの副菜を買うという行為の裏には「ときどき猛烈に食べたくなる和定食。満足いく定食を食べたいが、レシピのバリエーションが尽きた。考えるのが面倒だ」というインサイトが隠れているのだから。
開発すべきは、「ホタテウニソテー」という商品開発そのものではなく、それだけでもなく、「ほかの一品を踏まえた和定食の提案」なのです。
「役立つを売る」とは?
私たちはときどき和定食を猛烈に食べたくなる。そのインサイトに対し、「美味しいウニですよ」という提案をぶつけるのは、伝わらない可能性があるのです。やるべきは、「こうすれば美味しい和定食が食べられますよ」という提案。
だから、ビールもセットで売るし、ウニ丼に合うお米の水分量の説明も必要だし、できれば鮭だって手配したいし、漬物だってあるといいよね、的な提案を売るのです。
さあ、やるべきは、「ふるさと納税」や自社ECサイトに和定食の写真をのっけて、美味しい和定食を食べたいというニーズを根本的に解決することからはじめるってことになります。
ビジポコの学び
――役立つで売る。美味しいで売らない。――
「ウニ レシピ」の検索結果をみながら、「副菜として必要そうだから」という考えによってインサイトを導き出す河上を画面越しに、私はまたしても「なるほどおおおおおおお」とゴロゴロ転がりそうになりました。
そう。そうなのです。役立つで売るってそういうことなのです。すべての商売は役に立たなければ買ってもらえず、美味しいという身勝手な理由で売ってはいけないのです。美味しいのは事実だとしても、画面越しのコロナ禍では伝わりません。じゃあ口コミをつくる?インフルエンサーにプレゼントして拡散してもらう? 一般の人に無償でプレゼントする? 私が思いつくことはどれもみんなやっていそうなことですが、あまり効果があるようにはみえません。
それは商売の基本である「役立つ」が欠けているからです。
こ、これがデザイン思考…!なんというパワーでしょうか。そしてかーちゃん社長にそのまま伝えることとしました。さて、どうなるでしょうか。ウニ屋の成長物語をお楽しみに!
また、ビジポコでは具体的なアイデアだしのお手伝いもいたします!感動を一緒に味わいませんか?お問い合わせよりどうぞ。