「機械化したい。できれば勝ち」という言葉に隠れた本当の問題

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ビジポコ藤田です。

私は北海道根室市のウニ屋の娘で、悩みに満ちています。

そもそも商売は悩みだらけ。

今回は、父親と機械化の話をお届けします。

 

ウニは、トゲトゲがついてチクチクするので、カラをむいて中身を取り出す必要があります。手作業でする必要があり、商業化したら人件費もかかりますね。それを重くみたとーちゃん(父親)は「ウニのカラむきを機械化したい。できればうちの勝ちだ」といいます。しかし、機械化しようにも1,000万はかかるでしょうし・・・。

 

一方、私藤田の夫は「ラッコに芸をしこんでカラむきさせれば人件費ゼロじゃね?くるくる回って可愛いし」といいます。

 

1,000万円も誰が出すのでしょうか。そして機械化なんてそもそもすべきなのでしょうか。ラッコちゃんはウニを食べちゃわないでしょうか。想定外の提案を前に頭を抱える私に対し、編集長であるデザイン思考の専門家・河上はどのようなアドバイスをするのでしょうか。

 

 

ウニのカラむきマシーンは存在する

 

世の中は広いです。インターネット上でウニのカラむきマシーンを検索すると、ありました。釧路内燃機製作所さんの「うに割くん」です。(値段はわかりません)

 

では、うに割くんを買ってくればすむ話なのでしょうか?

その前に、すべての商売は、仕入れて、加工して、デリバリ(届ける)することで成り立つといいます。

 

●ウニ屋
【仕入れ】港でロシアよりウニを買ってくる
【加工】男衆が割って女工さんが詰め
【デリバリ】全国の市場やふるさと納税する

●トヨタ自動車
【仕入れ】下請け会社さんに部品を作ってもらい
【加工】工場で組み立てて
【デリバリ】販売店で売る

●コンサルタント
【仕入れ】知識を知り
【加工】考えて
【デリバリ】アウトプットする

●ライター・記者
【仕入れ】情報を集め
【加工】書いて
【デリバリ】読まれる

 

仕入れ・加工・デリバリ。

ウニ割くんの導入は、【加工】の部分のコストを下げてくれる可能性を秘めています。

 

コストを下げるのが目的なら・・・

 

単にコストを下げたいのであれば、とーちゃんの提案(機械化)は正解なのでしょう。

コストを下げるという目的があるからです。ただし、「コストを下げたい」と思うのであれば、ラッコ戦略もあり、ということになります。他にもありますよ。

 

方法論として、機械化 or ラッコ or 外国の方にお願いするetc…

 

外国人といえば、ウニ屋のある北海道根室市では、結構、外国の方を見かけることがあります。もちろん北方領土に近いのでロシアの人は大勢いるのですが、それ以外にもアジア圏の方々を見かけます。海産の街・根室で、海産加工に従事しておられるのでしょう。

 

ちなみに、私藤田の親が運営するウニ屋『大喜(だいき)』には、技能実習生はいません。SDGsという言葉を、親は知りもしないと思いますが、とにかくいません。いるのは男衆と、加工をしてくれる地元の女工さんたちです。シングルマザーの方もいます。ウニの詰める作業は、つぶしのきく技術職であり、経済的自立をサポートしたいという経営者としての願いもあるのです。

 

だから外国人の方にお願いするのはパス。

ラッコも芸を仕込むノウハウがないのと、食べちゃうので今回はパス。

じゃあ機械化?という話になります。

 

そこで、編集長・河上によると、「何の目的で変えたいのかを議論する必要がある」とのことでした。これをゼロベース思考、と呼ぶのだそうです。

 

コストカットは売上が見えていてはじめて意味がある

 

我が家のウニは、豊洲市場をはじめとした全国の市場・マーケットに卸しています。豊洲から都心にデリバリーされていくウニちゃんたちは、銀座を中心とする高級鮨店に納品され、みなさんのちょっとした贅沢な瞬間や接待を価値ある時間に彩ってくれます。

 

なので、基本的にウニ屋は製造業であり、お客さんがいません。市場が相手です。そして市場もいろいろな特徴を持ちます。京都や神戸の市場は高いウニが売れ、大阪の市場は安さを求め、東京の豊洲市場は高いウニでも安いウニでも、すべてを飲み込むウワバミです。なんとなく、私たちが抱いている都市のイメージと合致していて面白いですね。

 

なので、売上は基本的に見えています。どこかの都市でトラブルがあっても他の都市の市場は動いていることが多いですし、コロナ禍ではふるさと納税の個人への売りが好調で、親は大変忙しそうです。

 

売上が見えている状態で、コストをカットすると、経営にインパクトがあります。

しかし、機械化にはある重大な欠点が存在し、それは「ファンがゼロになる」ということだと河上は指摘するのです。

 

あえて人でやる意味

 

ーー機械化すると、ファンがゼロになるーー

 

盲点でした。また興奮してゴロゴロ転がりそうです。

そして、「何の目的でコストカットしたいのか」という問題に立ち戻ります。果たして、人件費をゼロにして何をしたいのか。とーちゃんは儲けてキャバクラにいきたいのか、それとも事業を拡大したいのか。事業を拡大した先に何を求めているのか。そこを一度話し合う必要があるとのことです。

 

ファンを捨ててまで豪遊したいのか。それとも・・・。

 

娘としての予想は、とーちゃんは人嫌いで、大勢の人がいる職場が、仮に自分の会社であっても苦手なのかもしれません。だから、人をできる限りいれない形で商売がしたいのかも。そう考えると、なんだか悲しくなってきます。

 

他でもないデザイン思考で考えるなら、答えは「聞いてみること」です。とーちゃんはなぜ人嫌いなのにそんなにビジネスが好きなのか。たくさんの失敗をした経験を、なぜ人に伝えようともせず、自分の心にしまっておこうとするのか。

 

中小企業や家族経営にありがちだといわれればそれまでですが、内面への関心が、そしてコミュニケーションの断絶という大きな課題が、コストカットの機械化の話を通じて浮かび上がってきたのです。

 

ビジポコの学び

 

また今回も、驚き発見に満ちていました。

 

  • すべての商売は、仕入れ・加工・デリバリーで構成される
  • コストカットはそもそも何の目的で行うのか
  • 売上が見えていてはじめてコストカットに着手できる
  • 機械化するとファンがゼロになる
  • 儲けた先に何の夢をみているのか、話し合う必要がある

 

冒頭の「うちの勝ちや」という言葉から、もしかしたら増える競合を意識し、競争意識に駆り立てられているのかもしれません。のんびりしているように見える地方の港町に隠れた、とてつもない競争意欲。

 

ああ、東京のど真ん中でも、地方でも、関係ないのです。商売は競争に次ぐ競争で、それがプロダクト(といってもウニ)を磨き、品質を高め、世の中を豊かにする・・・とはいっても、ミクロ的にはしんどい気がします。

 

競争を勝ち抜くために何ができるか。以下の言葉を聞いたことはありませんか。

 

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

 

そう、経済産業省が2018年12月に書いたレポート。DXです。

 

河上はデザイン思考・新規事業の他に、DXも専門分野としており、今DXは本当にバズワードになっています。DXは日本を救うのか。その前に、うちのウニ屋をどう変えていくのでしょうか。また次回以降に続きます。

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ライター藤田は、ウニ屋の娘です。創業者である母親が国の専業主婦1円起業枠でゼロから立ち上げた北海道根室市のウニ屋の娘で、ディスカッションを楽しく学びある記事に仕上げます。

 

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