圧倒的不景気がやってきた。ウニ屋の年商10倍大作戦

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ビジポコ藤田です。

当シリーズは、北海道のエゾバフンウニを扱うウニ屋の娘・幸子として、デザイン思考の専門家・編集長ヤスよりいただいた話から、自分なりの学びをお届けして参ります。デザイン思考はいいぞ。最高だ。そして手前味噌(?)ながら、編集長も最高っ!!!

 

 

さて、コロナ禍ですさまじい不景気の嵐が吹き荒れています。

銀座のパテックフィリップが撤退し、秋葉原はソフマップビルの一部がビルごと空き家に。翻ってウニ屋はどうかというと、これまでは「自宅で美味しいウニを食べようかな」というニーズがあり、コロナ禍でもウニの売上は落ちていませんでした。

 

しかし、市場の値段が落ちてきたのです。繰り返される緊急事態宣言により、皆の感情が撤退している証拠かなと思います。市場という場で取引されるウニ価格は、好景気だと上ります。しかし、すさまじい不景気がやってくると当然ながら下がるのです。日本中の市場へウニを売って暮らすということは、そうした景気の波をとても敏感に感じ取ることでもあります

 

ウニがダメなら、他の水産加工は・・・他の食品は・・・そして日本は・・・世界は・・・どうなってしまうのでしょう?ただ悲観的に泣き暮らしたり、自分の手でコントロールできない問題にキーキーいったりするのは、商売人のポリシーに反します。

 

そんな景気の中で、親は高い値をつけてウニを売ることに成功しています。亡くなった祖父母はかつて滋賀県で卵屋さんを営んでいました。「三方よし」で知られる近江商人の血を引く商売人カーチャンは、どのような選択を取るのでしょうか。

 

価値を高めよう

 

カーチャンが行ったのは、「ウニに日本風のパッケージングをしてあげる」ことです。和柄の風呂敷でラッピングしてあげて、冨士山、芸者、歌舞伎のシールもペタペタはってあげると、中国の富裕層の方が大喜びで買ってくれるのです(正規のルートです)。

 

カーチャンは、喜んでもらおうと思って漢字のシールも貼ってあげました。「外国の人はどんな漢字を見たら喜ぶかな・・・?」と考えたカーチャンは、以下の漢字を試してみました。

 

美・・・喜ばれる

月・・・喜ばれる

雨・・・ダメ

 

「美」は喜ばれました。「月」も最高。でも、歌舞伎の人が傘をさしてる絵に「雨」の漢字は、いまいちでした。そもそも、歌舞伎のアレは雨傘なのか!?!?!うーーーん、難しいですね、喜んでいただくというのは。

 

「何の漢字が喜ばれるか。難しいなあ」というカーチャン。

 

そして何より重要なことに、高く売れているのです。海外のウニ好き富裕層が、ニッコニコでウニのラッピングを紐解く姿が目に浮かんでこちらまで嬉しくなっちゃいます。

 

私が富裕層だったら。

美味しい食べ物を買ったときラッピングに大好きな異国の文字がいっぱい書いてあったら。

ペタペタと漢字シールが貼ってあったら

 

・・・飛び上がって喜びます。

 

こ、これが価値を高めることか!となんだか学びになりました。誰かを大喜びさせて、それをできるだけ規模を広げて行うと、それだけで商売は成立するのですね。

 

“北のハイグレード食品”を打ち落とせ

 

カーチャンは、

 

人を喜ばせるのは得意。(シールをぺたぺた)

それを大規模に売るのも得意。(ランキング1位)

しかし、特定の個人に気に入られるのは苦手。(北のハイグレード食品に苦戦)

 

という特徴があります。つまり、誰か偉い人(役人)に選ばれることを目的とする、北海道経済部主催の『北のハイグレード食品』に苦戦しているということ。イコール、特定の個人に気に入られるのが苦手。ようするにパーソナリティの問題がまたしても浮かび上がってくるのです。

 

人間性をいっても仕方ありません。そこでデザイン思考の出番です。私はこの問題(北のハイグレード食品に選ばれたい)を、編集長ヤスに伝えてみました。以下、まとめます。

 

役人が選ぶ・百貨店のバイヤーが買い付ける、と、どさんこプラザでランキング1位を取るのは違う。商人が喜んで売ってくれるモノとも違う。

 

役人や百貨店のバイヤーが喜ぶのは、その人自身が組織内で評価され、出世につながるもの。じゃあ、それは一体何なのか、という話になります。

 

たとえば、物語性はどうでしょうか。

ウチのウニ屋には、技能実習生はいません。周りの水産加工業には結構、従事している外国人の方はいらっしゃいます。アジアの方を乗せてどこかに向かうバンを見かけることもあります。他社については何も言いません。

 

じゃあ誰がいるかというと、地元の離婚した女性や、技術を持った女性陣、いわゆる「女工さん」です。そして、ウニは折り詰め弁当箱に入っていますが、そのサイドに貼られたシールは、地域の障害者施設の方が貼ってくれています。

 

そうした地域の文化的背景も含めて、提案するのはどうか、と編集長ヤスはいうのです。

だって、うまいウニひとつだけあってもしょうがないです。スーパーと食卓でひとつのウニ弁当箱(折り詰め)だけあっても、仕方ないですよね。

 

浮かび上がる新たな内面的課題

 

でも、きっとそれは難しいでしょう。

なぜなら、よそ者である我が家は、あまり地元で良く思われていない気がするからです。

私が以前、工場に遊びに行ったときも、女工さんたちの間で駆け巡る噂話や、地域の方からの手厳しい批評に圧倒されたものです。とてもじゃないけど、私個人はここで頑張れる気がしない。

 

しかし、そんな家族に新しくやってきた人がいます。

夫です。ハムスターアレルギーで運ばれ、病院で点滴を打っていたら、どこからともなく看護師さんが集まってきて「パンダちゃんのTシャツ可愛いね!」とキャッキャいわれたり、ラーメン屋で並んでいたら前にいた大学生に「そのスニーカー、かっこいいっすね」と声をかけられたり、誰とでもお友達になり多くの人から愛される、魅力的な人間。夫の人間性に期待です。

 

そしてそんな夫を持ちながらも自宅にこもって原稿ばかり書いている、書くこと以外、他に何もできない私。なぜ書くのか、なぜビジネスについて書き続けるのか。そしてなぜウニ屋を年商10倍にしたいのか。その先には、孤独があり、そしてその反動としてのさびしさと、周りの笑顔を求める気持ちがみえてきます。夫・親・女工さんたち・地域の人の笑顔がみたい。歓迎されたいのです。そして自分の価値は何か模索している人達に、ビジポコを通じて一緒に価値を探したい・・・

 

そう、まずやるべきは、心を閉ざし続けることではなく、孤独を解消することなのです。

 

  • 女工さんたちに「いろいろ教えてください」と頭を下げる
  • クラブハウスやVoicyなどのアプリを使い、お友達を作る

 

これはどうでしょうか。なんとなく良い行動な気がします。私が現場に出ることはないにしても、次に根室に行ったら女工さんたちに頭を下げて教えていただこう。ウニのこと。根室のこと。商売のこと。そして彼女たちの人生のこと。地域の人と一緒に何かできないか、考えてみよう。だって、ぽつんとウニがひとつだけあっても、和定食は完成しないのです。

 

デザイン思考は、考える道具だと編集長ヤスはいいます。その道具を使ってみると、このような問題が浮かび上がりました。「商売は人」という言葉がありますが、裏面もそうなのかもしれません。欠点が、人間的な課題が、商売のハードルを通じて浮かび上がってくるのです。

 

他でもない課題が私を含む人間性のステージに移ったところで、私たちは何をすべきなのでしょうか・・・?そしてウニ屋はどうなるのでしょうか?次回以降に続きます。

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ライター藤田は、ウニ屋の娘です。創業者である母親が国の専業主婦1円起業枠でゼロから立ち上げた北海道根室市のウニ屋の娘で、ディスカッションを楽しく学びある記事に仕上げます。

 

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