最強の“すべらない話“には、考える価値がある

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ビジポコ編集長になんでも話してみよう!のコーナーです。

 

一般論ですが、世には「女の話はつまらない」問題なるものがあります。ジェンダーフリー、男女同権がいわれるこのご時世、おおっぴらにいうことははばかられますが、一般的に女性は会話にコミュニケーションと共感を求め会話が単調になりがちで、一方、男性の会話は課題解決を主軸に置くので面白くなりがちだという、一般論というかある種の偏見です。

 

個人的な観測範囲では、女性である私は話が面白い方で、つまらない話をする男性も多いとは思うのですが、とにかく夫は「お前の話はつまらないよ」と嘆きます。では、夫の話は面白いのか。そんな夫が繰り出した最強の“すべらない話”とは何なのか。そしてそこから何を学んでいくのが、見ていきたいと思います。

男と女が繰り出す話

 

先日、ビジポコで「ドトールのロイヤルミルクティを再現しようとして、20年たった」という話を書きました。詳しくはリンクを読んでいただきたいのですが、ずっと作りたかった味が21年目にしてマグカップを変えることでできあがった、という話です。この話はインパクトが強く、また好評でして、学びも大きいです。

 

しかし夫は「つまらない」「話の冒頭だけ力業で引き込んでるだけ」といいます。

ドトールの話に限らず、何の話をしても、「つまらない」とあまりにいわれ続けた結果、こちらはありきたりな会話を避けることとなり、どんどん話が面白い方向に進化して色々な意味でモンスターライターになりつつあります。

 

「冒頭のフリ」を興味深げに語るスキルは夫も認めるところです。それがどこから培われるかというと、個人的なキャリアにルーツを持ちます。私は10年近くネットで記事を書いているのですが、ライターをスタートしたときは、某エンターテイメント系企業のオウンドメディアでミュージシャンについてまとめるライターとして働いていました。その次は、テレビの番組を興味深げにまとめるという仕事。いわゆるエンタメライターです。

 

  • ミュージシャンについてまとめる
  • テレビ番組を興味深げにまとめる

 

非ゴシップ系のエンタメライターは、書き仕事の中でももっとも蔑まれる仕事です。

 


かの有名なダウンタウン松本人志さんは、ツイッターでこのようにつぶやいています。8年前とはいえ、芸能人に死ぬほど嫌がられる番組まとめの仕事から書き仕事をスタートしたこと、そしてそれを通じて書く力を養ったことも含め、汚らしいキャリアを持つ傷だらけのライター人生かなと恥ずかしく思います。(昨今のエンタメメディアは、番組制作とも上手に持ちつ持たれつしており、ちゃんと制作サイドから情報がきて、価値ある情報を伝えられるよう努力されていると聞きます。)

 

普通の話はクリエイティブの敵

 

さて、何がいいたいかというと、普通の話はクリエイティブの敵だということです。たとえば「止まない雨はない」とか「好きを大切にしよう」とか「人の嫌がることはやめましょう」とか、そういう話は聞いても面白くないといいますか。つっこみようがない正論。「まあそうでしょう」としかいえない言葉たち。正論はクリエイティブを遠ざけるのです。

 

書き手としてのプラトンもケインズもニーチェも、普通を否定したい衝動があったとされます。”正論”・”普通”・”ありきたり”を心の中で否定する習慣をつけると、面白い話に出会えるのです。そして、その普通を強く否定する心の持ちようこそ、創造性の原点であり、面白い話を生み出してくれる原動力になります。

 

よくSNSのフォロワーを増やし、発信を求められる方法として、「食べたご飯(パスタ)について載せるのは、誰も興味がないのでやめよう」という語られ方をします。しかしクリエイターにとっては、「止まない雨はないよね」といわれる方が、パスタの話よりよほど苦痛をもたらすのではないでしょうか。

 

しかし夫は「そうやってごちゃごちゃと考えているのがまずつまらない」と一刀両断です。そんな夫に「じゃあ自分が面白いと思った話をしてみてよ」というと、次の話をしてくれました。

 

最強のすべらない話

 

夫の友人に、生活保護受給者の方がいます。友人は、お財布を落としてしまったか生活費がオーバーしたかで、お金がなくなってしまいました。友人は役所に相談。しかし役所は同月二度目の生活保護費を絶対に出してくれません。その代わり、困窮した人にあげる食料品のダンボールをひとつくれたそうなのです。

 

友人は家に帰って、腹ぺこで急いでダンボールを開けました。するとレトルトカレーやラーメンと一緒に、マウスウォッシュがたくさん入っていたのです。友人は「腹が減っているのに何でマウスウォッシュなんだよ!」と大激怒しました。

 

後日ファミレスで怒りをぶつけられた夫は、怒る友人を尻目に面白くてたまらなかったそうなのです。

 

最強のすべらない話からの学び

 

まさにすべらない話です。この話から学びは色々あります。

 

  • 自分を助けてくれるのは役所ではなく、「本当に困ったら役所に行け」という自分の知識そのものである
  • 人生には引きが大切である。つまり沢山のダンボールの中からよいモノを選び取る運。
  • 考えることは面白いということ

 

3つめを解説しますと、色々な学びです。

・生活保護を受けることは仕方ない

・役所は2度目の生活保護費を出してくれないという驚き(2度目の支給を許すと不正の温床になりかねませんよね)

・財布をなくすなよというあきれ。

・お腹が空いたときにそもそもマウスウォッシュをあげるべきなのかという議論

・役所の人も「喜ばれるだろう」「食べ物に困る人は歯磨きもろくにできない環境はなず、きっと必要だろう」という思いでダンボールに入れたのであろう想像

・お腹が空いたときに歯磨きグッズを渡され怒る気持ち

・「何で怒るんだよ!」と怒ったことに怒る人もいそう

・歯磨きは本当に大切だという事実

 

驚きませんかこの話。もう色々な感情がわいてきて、めちゃくちゃ面白い話です。私はめちゃくちゃ面白いと思いましたし、ビジポコ編集長・河上も「プロの芸人さんがするレベルの“すべらない話”」だといっていました。

 

考えることは面白い

 

ただし、です。これだけで話は終わりません。

人は考えることが好きで、考えることそのものが楽しいという側面があります。そして、考えること、思考には型があるのです。この“すべらない話“に残された謎、「お腹が空いた人には何をあげるべきか問題」の答えはシンプルに「非常食」です。お腹が空いた人にはレトルトカレーや賞味期限長めのパンなど、すぐに食べられるものが必要。

 

しかし、未来の困難を取り除くためには歯磨きが重要です。歯がないと、未来は今の空腹よりもっと困ることになります。口内環境を整えるのは本当に大切。

 

デザイン思考では「聞いてみよう」から始めますから、役所の人に今度「どうして非常食の箱にマウスウォッシュを入れてるんですか?」と聞くチャンスがあればいいなと思っています。聞いてみることで、もっともっと、よりよい解決が浮かぶこともあるからです。

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