SNKRSがなかったら世界はまっくら

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ビジポコ藤田です。

 

時間を守ること。期日にお金を支払うこと。

この2つをできる限り心がけています。当たり前のようでいて、簡単に感じられて、いざ自分のことになるととても難しいこの時間とお金との付き合い方。

 

時間は厳守する必要がありますが、個人的に9時からのリモート会議に2分遅れてしまうことがあります。夫が「スニーカーの抽選があるので9時ジャストにスマホを構えて待機しろ」と言ってくるからです。

 

「すみません。本当に申し訳ないのですが、夫がスニーカーの抽選があるというので2分遅れます」

 

そういって詫びると、リモート会議の相手が男性の場合、絶対に「SNKRS(スニーカーズ)ですか?」という質問が戻ってきます。「僕もSNKRSやってるんですよ」と。つまり、相手もSNKRSというNIKEのスニーカーアプリを愛用しているのです。

 

男を魅了し、夢中にさせて狂わせるNIKEのスニーカー。何がそんなに魅力的なのでしょうか? 今回のビジポコは、SNKRSがなかったら、この世界は暗闇だという話をお届けします。

SNKRSとは? 夏のカブトムシ獲りと同じ楽しみ

 

SNRKSは、NIKEのスニーカーを当てる抽選アプリです。

 

朝9時に抽選が始まり、すさまじい倍率をくぐり抜けて当選すると、GOT’EM(当たり)のマークが画面上に現れ、即座にNIKEの倉庫から自宅へ発送に入ります。それだけ、ただそれだけのアプリなのですが、ただでさえ魅力的なスニーカーを、競争を勝ち抜いて手に入れるというゲーム性、ギャンブル性、競争性に、ファンは魅了され、競争率は高まる一方です。

 

 

はっきりいって、私藤田は女なのでスニーカーの魅力がわかりません。夫がSNKRSで抽選をGOT’EMして送られてくる靴をみても、全部同じにみえます。せいぜい色違いで、形も同じだし、「そんなに同じ靴ばっかり集めてどうするのだろう?」とすら思います。

 

夫は「SNKRSは女にはわからない! 夏にカブトムシを探すのと同じぐらい、夢中になるの!」といいます。(ただし、シューズにはウィメンズもあります)イベントも、外食も、普段の外出すら制限される世界にあって、SNKRSがなかったら世界は真っ暗だというのです。

 

そこまで人を夢中にさせるのがすごいですが、NIKEのSNKRSアプリはなぜそんなに人を魅了するのでしょうか。

 

 

NIKEは2019年にAmazonでの販売を撤退

 

世界のスニーカーブランド、NIKEは、Amazonでの販売を2017年に開始し、2019年に撤退しています。CNBCに対してNIKEの広報は、「よりダイレクトでパーソナルな関係を通して、コンシューマー体験を高める」と宣言してAmazonから撤退しています。

参照:Nike won’t sell directly to Amazon anymore(英語)

 

「ダイレクトでパーソナルな、消費者の体験を高める」ーーこの言葉通り、2018年3月に日本市場向けにリリースされたアプリ、SNKRSは国内だけでも何千万人ものユーザーを抱えています。

 

NIKEがAmazonから撤退した理由は様々です。

 

  • Amazonは販売データをブランドに明かさない
  • しかし、Amazonは売上だけはきっちり持って行く
  • 偽物の跋扈と、Amazonが偽ブランドに対して有効な対策を打てていないこと
  • 2017年頃より興ったD2Cブームの到来
  • コンシューマー体験の向上を目指すという理念

 

Amazonへの不満から始まり、消費者の体験を高めるという理念に行き着いたのです。

 

違うお客さんに違う顔を見せる

 

NIKEアプリのすごいところは、そのSNKRSの射幸性だけでなく、「きっちりとお客さん向けの顔を使い分けている点」だと編集長ヤスはいいます。ファッションとしてのスニーカーを欲しい人には、SNKRSで抽選を楽しんでもらいます。そして、一方でNIKEには、本気で走りたいという人、そして本気で走りたいけど挫折してしまった人も、お客様として存在することも忘れてはなりません。

 

  • ファッションとしてNIKEスニーカーが欲しい人
  • 本気で走りたい人
  • 走りたいけど挫折しそうな人

 

こうしたお客様によって、顔(アプリ)を使い分けていると、ヤスはいうのです。

 

確かに、日本企業はお客様を混ぜて考えてしまいがちです。スニーカーをファッションとして欲しい人にはレアスニーカーを買えるアプリでレア感を演出し、一方で、走りたい人には、「NIKEアプリ」を通じて、いくらでもスニーカーを買えて、走りを楽しめるようにしているのです。

 

まさに、「お客様によって顔を使い分ける」で、NIKEに消費者が何を求めるかによって、違う表情が浮かび上がってきます。

 

NIKEは何を売っているのか?

 

NIKEはスニーカーを売っています。しかし、スニーカーだけを売り続けると、コピーする偽ブランドが登場します。靴を売るだけだと、生産国での同じ工場で夜間に生産された偽ブランドが、安く違法にスニーカーを売り、ブランドを毀損してしまうのです。すべての巨大ブランドがこの偽ブランド問題に悩まされています。

 

しかし、NIKEは、SNKRSを通じて、物理的にはスニーカーを売りながらも、「9時にSNKRSアプリを夢中になってタップしまくる」という体験を売っているのです。

 

同様に、走りたい人にはNIKE RUN CLUBを通じて、思わず「走らなきゃ!」と思う”気持ちの変化”や、「走ってよかった!」という体験を売っています。3ヶ月で挫折してしまった人に対し、ランキングを提示して走った距離を前向きにとらえてもらい、走りを続けるという体験、そして「自分を変える体験」をサポートしているのです。

 

つまり「走りを通じて、自分自身を好きになってもらう体験を提供している」と、編集長ヤスは指摘します。

 

NIKEはもはや、ただスニーカーを世界中にばらまいているだけではなく、売るモノの変化が明確に見て取れるのです。

 

巨大産業になりつつあるスニーカー

 

もはやスニーカーは巨大産業になりつつあります。昔からスニーカーを取り扱い、レア物を限定販売するスニーカーショップ、株のようにスニーカーを取引するサイト、二次流通を担当するフリマアプリ、真贋鑑定をする鑑定業者、鑑定方法を紹介する熱狂的なNIKEファンのYouTuber、リペアを行ってくれるプロの靴屋修理屋さん。登場人物が非常に多いのです。

 

どうしてもかっこいいスニーカーを手に入れたい人にとっては、二次流通に手を出さざるを得なくなることがあります。いわゆる“プレ値(プレミアム)”の存在です。プレ値はときに数十万円の値がつくことがあり、偽物も混じるので神経質になる世界です。

 

鑑定業者は第三者機関として独立していないと、信用を担保できません。「専門業者」だ、「何万足鑑定した」と自称しても、あくまで自称です。コツを覚えたバイトがちょいちょいと真贋を鑑定しているだけだと、本や漫画の下取りと同じになってしまいます。

 

DXしようとするNIKE

 

SNKRSという仕組みを考えたNIKEを先導したのが、前社長のマーク・パーカー氏です。パーカー氏は1979年にデザイナーとしてNIKEに入社。貢献してきました。芸術を愛するパーカー氏が作り上げた現在のNIKEは、まさにデザインの力を原動力に持ちます。

 

そして2020年。パーカー氏の代わりにNIKEのCEOとなったのが、スタンフォード大学でMBAを取得したジョン・ドナホー氏です。これからデジタル化を通じて、しゃれた靴売りから、プレミアムな体験売りへ。DXを通じて進化を遂げようとするNIKEから目が離せません

 

ちなみに、NIKEのSNKRSに心を狂わされた我が夫は、「wi-fiを切り、4G回線にすると当たる」「NIKEのシールをおでこに貼って祈ると当たる」「スマホをシェイクしてGOT’EMを迎えに行く」と、混乱を見せています。たまにしか当たらないので少しおかしくなってしまったのかもしれません。

 

「非科学的すぎる」と指摘しても「バカやろうこれは科学だ!」「必勝法をネットに書くな!みんなに当たる方法がバレるだろ!」と言います。

 

少年時代のカブトムシと同様、男を狂わせるSNKRSアプリ。自宅に積み上げられたNIKEスニーカーボックスの山を見ないふりしながら、遠くアメリカの会議室で議論されるDXに想いをはせています。すべては、「靴とは何なのか?」の問い直しから始まっているのです。

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