それは夢か欲望か。流しそうめん屋の悲劇をくり返さないために。

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ビジポコ藤田です。

 

ウニ屋シリーズをお届けします。当シリーズは、北海道のウニ屋の娘である私・幸子が、圧倒的不景気の中、年商10倍を目指して奮闘しつつも、何か読者さんの学びになることがあればいいなと思ってお届けしていきます。私が活躍するのではありません。デザイン思考を用いて、人生を変える経験を、これを読んでいるあなたにしていただきたいのです。

 

さて、先日、編集長ヤスに「法人としての夢を見ることが大切かなと思います」といわれました。夢・・・夢・・・夢・・・!? 夢なんてウニ屋にあるのでしょうか。日々の暮らしで精一杯で、実現したい世界や見たい景色など考える暇がありませんでした。

 

そりゃあ、お洒落な部屋に住みたいなとは思います。可愛いスカートも欲しいです。でもそれは「欲」であって、夢とは少し違うかなと。

 

夫に夢を聞いてみました。「欲しかないね。夢がないね」と二人で頭を抱えていたのですが、ある日、夫は自転車が欲しいと言い出したのです。

 

ウニ屋と、ライターの仕事をどちらも成功させて、東京のど真ん中に住むことがあったら、自転車を買いたいな。チャリで毎日、兜町の株価を見に行って、テレビ東京に謎の投資家ジジイとして取材されたい。

 

おお、素敵な君がみる、素敵な夢。自分だけが登場人物で、欲に少し近い気もするけど、素敵な夢だね。

 

では、私個人の夢は何なのでしょうか? シャネルのスカートをはいて悦に入る欲望だけでできた女なのでしょうか? そして、なぜ会社に夢が必要なのでしょうか・・・? 今回のビジポコは、なぜ会社が夢を見る必要があるのか、というテーマです。

 

流しそうめん屋の悲劇

 

梅雨が来て、夏ももうすぐ。テレビでそうめんの特集を見ていた夫が、何気なく「ねえねえ、流しそうめんってしたことある?」と聞いてきました。何でも夫は少年の頃、田舎の岡山県で流しそうめん屋さんに親戚一同でかけたことがあるらしいのです。

 

流しそうめん専門店というのも驚きですが、内装は岩があり、ハーフオープンで外の景色が見え、川のせせらぎが聞こえて、ムードは抜群。少年だった夫は、竹の筒と竹の箸を渡され、どきどきしながら流しそうめんをスタートしました。

 

しかし、椅子を順番に並べられ、ストレートな竹の筒の前に座らされ、直球でそうめんが流れてくるという、最悪のそうめん屋だったのです。直球で流れてくるそうめんがびちゃーっとカップにつっこんできて、それをずるずる食べる感じだと。

 

「流しそうめんって、背の順にみんなで並んで、わいわいいいながらつつくものじゃないの?こんなに投げつけるみたいにそうめん流したら、風情もクソもないじゃん」

 

と、幼き日の夫は思ったと言います。

 

  • 竹の筒、竹の箸、ハーフオープンの岩の内装。田舎を活かした完璧なムード設定
  • 流れる台がまっすぐな竹を1人1本。風情も何もなくそうめんが流れてくる
  • おまけに、そうめんがこぼれたらもったいないので、無理矢理お客に食べさせる

 

「大人になって思い返すと、怒りがわいてくる」と夫。つまり、

 

  • 事業者側の都合が全面にでてしまうと、しらける

 

のです。これはわかる気がします。それに、多くの商売で発生していそう。自分の都合、事業者側の都合だけにフォーカスしており、せっかくの内装や楽しんでもらうための仕掛けが、つめの甘さによって台無しになっているのです。

 

悲劇をくり返さないためには、夢が必要

 

夫が40年以上抱え続けた「あれは果たして流しそうめんだったのだろうか・・・?」という問い。結論としては「最後の最後に事業者側の都合が見えた」となります。

 

誰だって、儲けたいですよね、お客さんに喜んでもらいたいし、おまけに儲けたいですよね。だって心身を犠牲にして喜ばれても、それはちょっと仕事の本質とはずれるかなと思います。

 

事業者側の儲けたいという感情や、喜んでもらいたいという願い。そのふたつは、きっと混ぜてはいけないのです。混ぜてはいけない欲と夢が混ざるから、流しそうめん屋の悲劇は起きたのではないでしょうか。

 

ああ、だから会社であっても夢が必要です。お客さんに喜んでもらって、どんな世界が見たいのか。誰とどんな景色を見たいのか。

 

ウニがぽつんとひとつだけテーブルにあっても、強烈に求められる和定食にはならないのです。ウニには、仲間が必要。醤油ちゃん。海苔ちゃん。焼き鮭ちゃん。味噌汁ちゃん。しば漬けちゃん。箸ちゃんと茶碗ちゃんだって必要です。

 

「誰と、どんな景色がみたいのか・・・私には夢がないや。可愛いスカートは欲しいけど」

 

そこで、ウニ屋の娘はビジポコ編集長ヤスより、こういわれました。

 

「個人的な私欲から始まってもいいんです。それを、大勢で見る夢に変えていくには、ストーリーテリングの力が必要ですよね。物語の力です。言葉の力が、個人的な願いを、大勢で見る夢に変えてくれます。そして人に伝わっていく力を持つんです。ゆらゆらと考え続けて良いと思うんです」

 

言葉の力で、欲望を夢に変えていく。

ヤスは、デザイン思考や新規事業の力で、フリーランスやベンチャー 中小企業からトヨタとさまざまな日本企業を、そして町役場から特許庁、金融庁までを支援し、『Japan as No1』の復活を夢見ています。そして本当にそうなった日の朝のコーヒーは最高だから、その最高のコーヒーを飲むために仕事しているんです。といいます。

 

素敵な夢です。そして、なんだかヤスと話していると、本当にそうなりそう。不思議なパワーがわいてきます。

 

ウニ屋の夢はなんでんねん

 

さあ、ヤスも、夫も、夢をもっています。カーチャン社長は「本州の人に、いっぱいウニを食べてもらいたいなあ。お金があまりない人にも、特別なウニを食べて、『こんなに美味しいものあるんだ、生きててよかったな』って、思ってもらいたい」といいます。

 

では、ウニ屋の娘、幸子の夢はなんでしょうか?

『生きていて良かった』と思えるぐらいの感動をしたことはないかもしれない。それは私自身が、命をかけられるほど真剣に何かに向き合ったことがないという現実の裏面です。ああ、夢がない、夢がないから、ウニちゃんはぽつんとしていて、いつまでも仲間ができない!私には欲しかない!

 

考えてみれば、ビジポコ相談室に来られた歯科衛生士の伊藤さちさん、元ホテルマンの伊藤仁さんも、夢が感じられました。

 

歯科衛生士の伊藤さちさん・・・地域の歯科レベルを上げたい

元ホテルマンの伊藤仁さん・・・お世話になったホテルに恩返しがしたい

 

では、私はどうでしょう?可愛いスカートが欲しい?スーパー銭湯で垢すりしてもらってピカピカになりたい? お笑いの劇場で好きな芸人さんを応援したい? それは夢じゃない!

 

今時ネットショップは簡単にできあがります。そして本当に世の中へ最高の和定食をご提供しようと思ったら、海苔ちゃん達の力が必要です。でも、今の私には、海苔屋さんが「うわあ!素敵!ぜひ一緒にやりましょう!」という夢やビジョンが描けないでいるのです。

 

だから、ひとりで考えていると、海苔屋さんとは仕入れ数でつながったり、売上額でつながったりと、そういう付き合いしか思い浮かばないのです。ビジネスなんだから、それでもいいかもしれません。ただ、私がこの世界に提供したい和定食は、そうじゃないんだああああああああ!!ひとパック200円で海苔を仕入れれば完成するもんじゃないんだ!!!!

 

カラッポのウニ屋のネットショップを前にして、誰にも声かけすらできないでいる私。。。語るに値する夢を持たない私の姿が、浮き上がってくるのです。

 

うぐぐぐぐぐぐ。

夢を持たず、欲望しか持たない恥ずかしい私。まさかこんな生き恥をさらす日が来るとは・・・。

そもそも問題は売れないネットショップではなく、夢を見る力の欠如だと気付いたのでした。続く。

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ライター藤田は、ウニ屋の娘です。創業者である母親が国の専業主婦1円起業枠でゼロから立ち上げた北海道根室市のウニ屋の娘で、ディスカッションを楽しく学びある記事に仕上げます。

 

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