
ビジポコ藤田です。
将来的には実家のウニ屋をお手伝いしたいと思いつつも、今は、書き仕事が中心なのですが、出版やライターの業界には、このような風説が存在します。
「出版社には『自伝を本にしたら売れる』と定年退職後の方からの原稿企画が山ほど持ち込まれる」
「どの小説の公募にも働いていた頃の自分を主人公にしたおじさんの私小説が送られてくる」
自分の人生こそは、書籍になって読まれる価値があると、おじさんに限らず誰しもが思うのではないでしょうか。語りたい欲を家族の代わりに聞いて雑誌に仕上げる『親の雑誌』という商売まで存在します。
超有名人でもない誰かの自伝。関係者以外、読みたいとはあまり思わないですよね。取材記事が読まれないのもまさに同じ構造があります。
- 誰しも自分を語りたい
- 誰しも人の語りは聞きたくないと
- 誰しも「自分だけは語る価値がある」と思う
一方で、地下鉄サリン事件の被害者の方々の人生を書いた『アンダーグラウンド』(村上春樹 著)は、凄惨な事件に遭遇するまでの日々を描いています。読み手は、人生を大きく揺るがす事件に遭遇という緊張感を持ちながら、彼ら/彼女らの凝縮された日常に、超一流の書き手の腕でぐいぐい引き込まれてしまうのです。
私も、「自分を語るよりは、誰かの人生を文章の力で永遠に刻みつける仕事がしてみたいなあ」と思います。だからこそ、ビジポコでみなさんのこれまでの人生、周りの方への想い、そして考えたビジネスの計画を聞いて文章にできたらな~とは夢をみています。
一方、ウニ屋です。ウニを届けたいとは思いますが、夢がみつからないと、ダダをこねているのです。
夢は経験を積み重ねた先にある!?
「夢が見られないのは、知識不足や経験不足かもしれない。」
そんな風に考えるようになりました。私がライターとして小さな夢を抱けるようになったのは、これまでの経験もあります。もう何年も仕事を続けているので、業界を知り、読み手を知り、書き手である自分自身への知識が蓄えられているので、ちょっとした夢も見られるようになってきたと、そう考えるのです。
小さな夢をみよう
ウニ屋さんのことも、もっともっと知れば、もっともっと良い夢が出てくるかもしれない。そう考えながら、欲しかなく、夢を持たない関係者として、前を向いていこうと思います。
さて、弁当箱(木箱)に詰められたウニを前にすると、多くの人が「どうやって食べるの?」と聞くのです。風味の良い海苔と、ちょっとお気に入りの醤油があれば、最高のウニウニパーティが開けるのですが、その質問がヒントとなって、海苔をセットにしてあげるスターターキット(?)を思いつきました。
しかし、海苔屋さんにお声がけする夢が見つからない・・・うなされていると、
「スーパーで海苔を買ってきて、セットにしてあげたらええねんで^^」
とカーチャン社長はいいます。つまり、「小さく始めたらええねん」といっているのです。
編集長ヤスも、
「よっしゃー!楽しかったー!!よかった、嬉しい!!
そう感じてきたもののうち、振り返って少しニヤける、自分で自分を誇らしく思える、そういうものは、無意識に追い求めた夢を達成していた可能性があります。」
といいます。おお、ということは、夢という単語で文字通り「夢がひろがりんぐ」してしまっていたのかもしれません。小さく、「やったあ!」と思えたこと・・・。やはり、過去の経験の中に夢は埋まっているのかもしれないです。
小さくお手伝いから始めよう
世の中は、そしてビジポコは、成功していく自分を見せつける場ではありません。それを心しながら、とにかく「役立つ」を提供していく。他でもない『デザイン思考』で考えると、千葉県に住む私自身が、北海道にいるウニ屋の親にしてあげられることがいくつか見えてきます。
- 都心の道産子プラザ(かつてルーキーランキング1位になったところ)に見に行く
- 豊洲市場に、卸として何をすれば、より鮨店の信頼を得られるのか聞きに行く
- 取り扱いを検討してくれている老舗百貨店に、何をすればもっと百貨店のブランドを高め、地元の方々に誇らしい買い物体験をご提供できるか聞いてみる
- ふるさと納税の受付を担当し、伝票書き、クレーム対応、発送管理などの事務を巻き取る
こうしたアイデアが浮かびました。お困りごとを助けてあげたいのです。
親は、関西弁でわかるように、北海道にゆかりがなかった人間。それが15年前、人生最後の勝負を賭けて、専業主婦1円起業枠でウニ屋さんを立ち上げたのです。当時、両親は50才を過ぎていました。順風満帆なんてありえません。本当にいろいろあったと思います。それに孫もいませんし、娘の私は迷惑しかかけていませんし。
だからこそ、親孝行・家族への感謝の意味も兼ねて、できることからやっていきたい。多分、伝票を代わりに作ったり発送管理をしたり、たまにあるトラブルやお叱りや、喜びの声を巻き取って、家族に良いフィードバックをたくさん返してあげたい。さらなる成長の足がかりにしてほしいという思いも。
発送は日々のメルカリ(!)取引で沢山経験したし、数年の受託ライター経験を通じて、お客様対応もまあまあ自信を持っています。
といっても、いきなりは信用されませんから、ネットショップで伝票を書いて発注管理をしたいです。うまくまわるようになったら、忙しいふるさと納税の方の裏方も、徐々にお手伝いしたいと、母と話しています。何より、小さくはじめんといけません。大きく大きく構えたって、そもそもお客様がいなければ、何も動かないのですから・・・。
家族を大切に思うのは、きっと自分だけじゃないね
そう考えると、私は家族への想いが原動力となってウニ屋を手伝いたいのだという姿がみえてきます。これまで、離れているのと私自身の気難しさもあって、あまり家族を大切にしてきたとはいえませんでした。
しかし、ウニ屋と近い港の商売である港湾労働を通じて心身を鍛え上げた伴侶(夫)を得て、何か私にもしてあげられることがあるかもしれないと、模索しています。
きっと、家族への想いは、自宅でウニ丼を食べたいなと思う人も同じです。自分が、自分だけが家族を思っているわけではないのですから。「自分だけが家族を大切に思っている」と考えるから、冒頭の「自分を主人公にした誰も読まない私小説」が生まれてしまいます。
そのうち、私自身がもっともっとウニ屋を知っていき、深い理解を得ることで、会社としてパブリックに見る夢ができてくるんじゃないかなと、前向きに考えることとしました。
自分は家族が大事。そして、ウニ丼を自宅で食べたいなと思う人も、きっと家族や周囲の人を大切に思っていることでしょう。ストーリーテリングの力で、何か夢はできないかな・・・。
キャッチコピーが生まれた!
以前、義理の実家にウニを送ったら、義家族が「こんな美味しい物ははじめてだ!」と祭りになったようでした。編集長ヤスのところにもお送りさせていただいたら、ご家族が集まってきて、楽しいひとときになったようです。そうした、家族の祭り・・・。
そこで、キャッチコピーが浮かびました。まず、夢を探すプロセスから「醤油を垂らせば、祭りのはじまり」というコピーの誕生です。今の案もありますし、夫の案もあります。比較してみると、こうなりました。
「日本で一番早く朝日の昇る町より」(現状・母作)
「醤油を垂らせば、祭りの始まり」(私作)
「ラッコもほしがる 宝物」(夫作)
そこで夫より、「日本で一番はやく朝日の昇る町は根室じゃないよ。南鳥島だよ。」とのツッコミが入りました。調べてみると、一番は南鳥島。次が富士山頂。人が住んでいる本州なら千葉県犬吠埼だとのこと!納沙布岬のある北海道根室市は、少なくとも一番じゃないという事実が・・・。
ふおおおおおお。今のコピーは、事実に即していないという恐ろしいツッコミが・・・。これは言いづらい。親に言いづらいことですが、伝える必要のある事実です。ああ、まじで、どうしよう。
準備だけはしっかりと!
さらに夫はいいます。「クレーム対応は俺にまかせとけ。お前がペコペコすると、相手はつけあがる。根室チクチク相談所は俺がやる」と。ああ、頼りになるような、逆効果のような・・・。
欲望も夢もコピーも、自分自身と世間を知っていく必要があります。ああ、まだ何も、何一つ動いていないというのに、筆だけは、口だけはペラペラ回るのでした。
ウニ屋は、10月までロシアの禁漁期間でお休みです。次の10月ももう予約でいっぱいであり、11月頃までネットショップをオープンする猶予があります。商売も何もかも、準備が大切。さあ、何をしましょうか。続きます。