
ビジポコ編集長・河上に仕事のヒントをもらおう!のコーナーです。
仕事は他者の問題を解くものです。では、どうやって問題を解けばいいのでしょうか? そこで使えるのが考え方のツールであるデザイン思考です。一方で、自分の問題や自分の思いを解いていくのはアート思考と呼ばれます。
デザイン思考・・・他者の問題を解決するための道具
アート思考・・・自分の想いを起点に物事を進めていく
と、編集長の原稿で学びました。
デザイナーがデザインしていくように、考えるツールを使って、他者の課題を解いていくのがデザイン思考。アート思考は今の私にはだいぶ難しいので、デザイン思考で問題を解決していきましょう。
さて今回は、ケーススタディです。ライターの身に起こった25年前の事件を、デザイン思考で解いてみようという試みです。25年前、19歳の時パン屋さんでアルバイトをしていました。そこで起こった出来事と、デザインによる問題解決とは・・・。
【ビジポコの学び】
- まずは相手に聞いてみる
- 消費者の本音から考える
- 1分で語れる夢を一緒にみていく
- 現場にある具体的な手段で解決する
もくじ
「パンを配達してほしい」というおじいさん
19歳の頃、近所のパン屋さんでバイトをしていました。パンを並べたり、レジを打ったり、袋につめて渡したり、掃除をしたりと、なんてことないパン屋さんのバイトです。ある日、パンを並べていたら、おじいさんのお客さんがやってきて、「パンを配達してくれませんか」と私に聞いてきました。
そのパン屋さんでは、配達はしていないから断るのがルールでした。おじいさんにそれをお伝えすると、
「私たちは、ボランティアで掃除しています。高齢者が集まって掃除するのは結構大変です。そして、パン屋さんまで買いに来るのも遠くて。だから、パンを配達してもらえないでしょうか。」
と、さらにお願いされました。19歳のバイトにいわれても困るわけですが、とにかくオーナーはダメだと言うし、「うう・・・たぶん無理だと思います」という話をしたところ・・・
「オーナーに交渉しろ」というおばさま
そこに、店内にいた別のおばさまが割り込んできて、
「あなた、オーナーに交渉しなさい!この方(おじいさん)はボランティアで掃除をしているのよ、あなたがオーナーに配達してくださいと交渉すべきよ!」
と、言い出したのです。おそらく、掃除ボランティアのおじいさんとは無関係のおばさまで、近所の方です。地元は神戸といえど、関西のおばちゃんらしい行動なわけですが、
- パン屋のオーナー・・・その場にはいないが、配達の依頼はすべて断ってほしいとバイトに通達
- おじいさん・・・掃除のボランティア。高齢でパン屋さんまで来るのが大変だから配達して欲しい
- おばさま・・・善行だからバイトがオーナーに交渉すべき
- 私・・・間に挟まれた、売り子
という関係になって、とても困った思い出があります。
結局、オーナーに聞くこともなく「無理だと思います。ごめんなさい」と伝え、配達は立ち消えになりました。
ゆらゆらと考え続けて25年
「あのときどうしたらよかったのだろう?おばさまの言うとおり、私はオーナーに交渉すべきだったのかな?」
と、25年が経過した今でも思います。
オーナーからみると、ギリギリの人員で運営しており、配達をしている余裕もなかったでしょうし、ボランティアのおじいさんが、年を取って清掃ボランティアは結構大変でそれでも良いことをしている自負があるから「パンを配達してくれないかな」と思った気持ちもわかります。そして、「社長に交渉して、配達を無料でさせろ(意訳)」といいたくなるおばさまの気持ちもちょっぴりわかります。
三者三様の気持ちがあって、真ん中に挟まれた当時19歳。どうしたらいいかわからなかったのです。今までもわかりませんでした。
相手目線から整理してみると・・・
この話を例によってビジポコ編集長・河上に話してみました。
すると河上はまず気持ちを整理しはじめました。
「おじいさんは、オーナーではなくバイトの子に聞くところが、あえて聞いた気がしますね。若いバイトの子なら言いやすいというか・・・。」
とのこと。
その視点はなかったです。
おじいさんは、「自分たちは清掃ボランティアをしてるから、配達もボランティアでしてほしい」と、ある種の図々しい行動を頼んできているわけですが、「善意を強制する」行為そのものが、少し違うのではないかと河上はいうのです。行動を強制することになってるからでしょうか。
同様に、おばさまの「オーナーにあなた(藤田)が交渉しろ」という意見も、行動を強制しており、違うんじゃないかといいます。
デザイン思考で問題を解くなら?
これをデザイン思考で解いていくなら、まず「仕事かボランティアか、配達がどちらになるかは、オーナーの価値観によります」とのこと。どういうことかというと、仮にボランティアとしてパンの配達を行うなら、その清掃ボランティアにどれだけ共感できるかが鍵になってきます。
もしも、パン屋さんのオーナーに交渉していくなら、相手がどれだけ共感してくれるか、相手の関心を得られるかを大切にしながら協力を取り付けていくと。
デザイン思考では、1分で語れるような物語性のある夢を大切にします。
人に語れて、協力を取り付けられて、自分のやりたいことも実現できるようになるのです。
夢といっても、世界平和とか、GAFAなみの超パン屋さんになるとかそういうのではなく、ちょっとだけ語れる、周りに少しだけ自慢できるような、そんなストーリーでいいのです。
パン屋さんの夢はお客様の幸せ
たとえば、パン屋さんを何のために運営しているかという話になります。もちろん、小麦粉を使うと利益率が良いとか、近所に競合がいないからとか、事業者目線の都合はあったと思います。
パン屋さんも裏側の事業者側に色々あると思います。かなり早起きしないといけないので、周りと生活リズムが合わなくなるとか、オーナーにならない限りは薄給だとか、アレルギーの問題とか、色々・・・。
ただ「パンの焼けるおいがすると、幸せを感じる」というお客様の気持ちを大切にしている部分はあったはずだと編集長河上はいいます。(余談になりますが、編集長河上はこうした消費者の本音を言い当てるのがとても上手いのです)
「小麦粉を通じたハッピーを周りに振りまくためにも、清掃ボランティアの方にパンを配達してあげたら、地域の評判も上がるし、オーナーの夢も少し実現できるのではないですか?」
と聞いてみるかもしれない、が河上の案です。
ビジポコの学び
冒頭でデザイン思考とアート思考について、1行だけご説明しました。相手目線・顧客目線で考えることぐらいしか今まで視点として持っていなかったのではないでしょうか? 相手目線はシンプルでわかりやすい原則で、なんとなく「相手目線に立てば成功できる」程度の理解です。
編集長河上への相談の手前段階いつもそうなのですが、相手目線だけで物事を進めようとすると対立関係になってしまうのです。「自分の利益」VS「相手の利益」になり、相手目線で考える以上は、自分が折れるといいますか、相手の利益を優先して自分が損をするという構造になってしまっていました。
以前ご紹介した「フリーランスうっぷんたまってぶちまけ問題」も、こうした対立関係から生まれるのではと感じています。
ただ、デザイン思考は、何かが少し違うなと感じています。その少しの何かがなんなのか、まだぼんやりとしかわからないでいるのですが、
- まずは相手に聞いてみる
- 消費者の本音から考える
- 1分で語れる夢を一緒にみていく
- 現場にある具体的な手段で解決する
あたりが、デザイン思考の現在のコツです。
今回でいうなら「パンの焼けるニオイがすると幸せになる」とい消費者の本音とオーナーの夢を編集長河上は言い当てたのです。これは地味にすごいことです。