
ビジポコ編集長に人生の問いを解いてもらおう!のコーナーです。
オリジナルな人生を歩みたいなと思いますよね。特に現代ではライフスタイルが多様化しています。その背後には「つまらない毎日と思われたくない」という欲が潜んでいると考えられます。SNS時代に興ってきた新しい欲望ですね。
一方、頭のよさについて悩みを持っている人もいます。
「頭があまりよくない」ということ。個人的に、0→1は苦手じゃないし、ヒントをもらえばそこから考えをどんどん発展させていったり、ちょっとしたユニークな小話を持ってきたりはできます。また、ライターとして、「人の話を聞いて考え、コンテンツに落としこむ」ことは多少なりともできます。
しかし、考えの基になるタネや、インサイト(隠れた本音)を見つけることはとても苦手だと前々から思っていたのです。一方、ビジポコの編集長・河上は、人のインサイトを見つけるのがとても上手で、ものごとの価値の本質を見つけるのも上手なんです。
そして、この「頭が良くない」という悩みを編集長河上に相談したところ、あることを教えてくれました。そして、そこから、「欲望にはオリジナルがない」という話が飛び出します。
【ビジポコの学び】
●オリジナルはごくわずか
●文化は模倣していく
●人の欲望も模倣していく
もくじ
「頭が良い」「考える力がある」とはどういうことか。
「自分は頭が良い」と思える人は少ないのではないでしょうか。
人の考えたこと、ご意見を受けて考えることはできます。アイデアを生み出したり、ちょっと気の利いた文章を生み出したりすることはできるような気がしますが、そもそも何かをみてオリジナルの意見をいうことができないと思っているのです。
【誰かのオリジナルの意見】→【考える】
ができないのです。
これが密かな悩みで、「考える力が弱いな~」と常々思っていました。
”考える力が高い”編集長の河上に伝えてみたところ、
「『考える』といっても、僕だってどこかから思考のヒントを持ってきているんですよ」
と教えてくれたのです!
編集長河上によると、
【誰かのオリジナルの考え】→【自分の考え】
があるのではなく
【思考のヒント】→【考え】→【思考のヒント】→【考え】
のように、どこかから取ってきているのだと。
思考は誰かの思考からヒントをもらい、その思考がまた誰かのヒントになる・・・そして、その元の思考もまた、誰かの思考をヒントにしている・・・。禅問答のようですが、決して反射的に考えているわけではなく、誰かの思考を借りて、またそれを誰かが借りて・・・と循環しているということです。
つまり思考は”模倣”だと教えてくれたのです!なるほど!!!!
文化も模倣されて伝播していく
これを受けて、私藤田は思うところがありました。
大学で『経済学史』(経済史ではなく)を学んだのですが、文化というものもまた、模倣して伝播していくのです。
アリストテレスの学問が東に
たとえば、2300年前の世界の最先端は、古代ギリシアのアテナイ(アテネ)でした。当時でも現代でも、学びたい人はみんな最先端の町に集まります。今ならアメリカ。2300年前はアテナイ。
アリストテレスもまた、マケドニアの支配地域からアテナイにやってきている留学生でした。ソクラテスとプラトンは生粋のアテナイ人だったのですがアリストテレスは別の場所から来ていたんです。
アリストテレスは一人前になってふるさとに帰りアレキサンダー大王の家庭教師になります。そして彼の修めた学問はアレキサンダー大王の東方遠征とともに東をぐるーっとまわり、アリストテレスの書いた本はなんとアテナイからはるか遠くアラブ地域で見つかっているのです。
そこから、アラブを経由してアジアへと学問が巡り・・・というふうに、文化は模倣され、伝播していくのです。これをギリシア語で『ミメーシス』と呼びます。英語のmimicry(真似)の語源です。
プラトンの学問が西に
一方、プラトンは個人的挫折とともにローマに渡ります。つまりアテナイから西に向かったわけですね。そこでプラトンの学問はローマ帝国の礎となります。”千年王国ローマ”って聞いたことがあるのではないでしょうか。ヨーロッパの元になったローマです。
そこから宗教改革があってルネッサンスがあって啓蒙主義があってヨーロッパの近代化が起こります。さらに、ヨーロッパの思想が開拓団とともにアメリカに向い、現代経済学の基礎となったわけですね。
非常にざっくりとした解説ですが、経済学の歴史はこんな感じで古代ギリシアから派生してきています。これがミメーシス、文化の模倣です。
“オリジナルの欲望“は存在しない
ほとんどの文化は、模倣に次ぐ模倣で、最先端の地域から流れてくるんですね。個人レベルでみたときの欲望も同じで、オリジナルの欲望なんてものはなくて、すべてミメーシス、模倣、誰かのコピーなのです。
もしかしたら古代ギリシア人のうち、一部の人はオリジナルの欲望を持っていたのかもしれません。しかしそれ以外はミメーシスであると、経済学史は教えてくれます。
SNSのフォロワーを増やしたい?
一方、現代には「SNSのフォロワーを増やしたい」という欲望が新しく生まれています。猫も杓子もSNSでフォロワー増やしにご執心です。この欲望は人から人に伝わり、みんな誰かの真似をしてフォロワー増やしに夢中になっています。
記憶が確かなら、この「フォロワーを増やしたい」という欲望は、“るってぃ”という青年がオリジナルです。彼は2015年頃「フォロワーを増やす方法」というブログ記事を書き、はじめてそこで世界に「フォロワーを増やしたい」という欲望が誕生したのです。
つまり、るってぃさんは欲望のオリジナルだけれど、他の人はみな、彼の欲望のミメーシスであると。もしかしたら彼自身も、インスタグラムにいるどこかの若者の欲望をミメーシスしたのかもしれませんが、欲望を形あるコンテンツにしたのは、おそらく彼がはじめてです。
“オリジナル“なんてものは存在しない
つまり、この世に「オリジナル」というものはほとんど存在しません。マクロ的には文化、ミクロ的には個人の欲望すら、人からミメーシスされていくのです。
ミニマリストのYouTube動画を見ているとモノを捨てたくなりますし、節約系のYouTubeを見ているとお金をセーブしたくなります。ただし、豪邸のYouTubeを見ると、それはそれで、がんばって働いて大きな家に住みたくなるのです。何がしたいのか自分でもわからなくなりますが、他者の欲望がミメーシスされる経験をしているのは確かだと思います。
ビジポコの学び
考える力が低いような気がするけれど、知識はある。でもモヤモヤしている・・・そこが、編集長と話すことでスッキリし、モヤモヤが晴れました。編集長と話すといつもそうです。
頭が良くないと編集長河上に相談したら、人の欲が伝播し、タワマンに住んで夜景をみながらホームパーティしたいという庶民の欲望も、誰かのコピーだと学ぶことができました。スッキリ。
人の考えもまた、オリジナルなんてものは存在せず、誰かの模倣なのです。ただ、丸パクリは良くないだけで大学で学んだミメーシスを通じて文化も欲も伝播していくとわかっておけばいいのではないでしょうか。
長年、頭が良くないという悩みを持っていましたが、考える力もミメーシスだとわかったので、少し気が楽になりました。そう考えてみると、とくにビジネスの分野は別にオリジナルを競うものではなく、模倣に次ぐ模倣で、ミメーシスしていくのかもしれません。
そもそも、ビジネス書を読んでいたって、似たことが書いてありますし、何が誰のオリジナルかはわからないですよね。
SNSが発達し、誰もがオリジナルの人生を歩みたいと願う現代において、オリジナルはほぼ存在しないということがわかっただけでも、学びではないでしょうか。
●オリジナルはごくわずか
●文化は模倣していく
●人の欲望も模倣していく