
ビジポコ編集長にやってきた相談を紐解いてもらおう!のコーナーです。
ご相談をいただきました。
湘南でサーフィンの先生をなさっている佐藤さんからです。
「オリンピックの影響もあって、サーフィンをしてみたいという方は非常に多いです。そして、サーフィンを通じて人生が変わってしまう人も結構いて、今年に入ってからもスクールでは4,5人、湘南へ引っ越してくる人も。
今も十分、人生は充実していますが、もっともっと生徒さんの役に立ち、喜ばれるには何が必要か?」
湘南でサーフィンの先生!素敵ですね。
では、デザイン思考でビジポコ編集長河上はどう考え、どう答えていくのでしょうか?
ヒントは、キャンプでいうところのグランピングです。パッケージされた楽しさや、似て非なるモノを提供していく。サーフィンそれだけでなく、気兼ねなくケーキを食べられる1日を提供していく・・・。
さて、どうなるでしょうか!?
もくじ
インサイト(隠れた本音)を見つけよう
度々ご説明していますが、ビジポコの編集長である河上は、インサイト(顧客の隠れた本音)を見つけ出す才能を持っています。お客様が何を求め、本当は何を欲しているのかわかれば、あとはそれに従って商品やサービスを展開するだけ。それはどの商売でも同じではないでしょうか。
サーフィンを楽しみたいという方のインサイトは2種類あると河上はいいます。
①サーフィンのために引っ越しちゃう人のインサイト
②引っ越すまでは行かないけど、何度も遊びに行く人のインサイト
①は、みなさんのまわりにもいらっしゃるのではないでしょうか。サーフィンにすっかりハマって、湘南や一宮(千葉)に引っ越してしまい、どっぷりサーフィン生活をする方々です。
「自分の人生を生きるということはどういうことなのかを見つけてしまい、その道を歩くと決めた」人達。彼らを見て、周囲の人々はやっかみ半分で「趣味の人」「あっちの世界にいっちゃった人」「出世を諦めた人」なんていいます。
そう言う裏側には、一抹の寂しさと嫉妬と、そして道を見つけたことへの羨望が混じっています。
一方、②の人達は、実は旅行と同じです。「現実からの逃避」だと河上はいうのです。
「②の方々には、パッケージングされた楽しさを提供していくと、ツアーのように楽しんでくれます。非日常が味わえればそれでいいので、日常と非日常のスイッチをぽんと押してあげるような仕掛けを打っていく」と、良いのです。
ヒーローと、連帯と。
「湘南に引っ越してしまうぐらいサーフィンにハマった人は、そうではない人から見たらまるでヒーローです。勇気があるし、うらやましさもあるし、複雑な心境。でも、そこで線引きをしてしまうと、寂しくなってしまうので、薄くゆるく仲間として繋がっている感覚を提供できるといい。
少し違う話ですが、編集長河上の後輩に自衛隊の人がいて、彼らは特殊な厳しい訓練を突破したら、大きなメダルがもらえると。時々集まる際には、そのメダルを持ち寄って集まり、「昔一緒に乗り越えたよね」という連帯感を、物理的に持ち続けているのだそう。
それと同じで、連帯の印や、なにより「おかえり」って言ってあげるだけでも違うはずです。」
フジロックもディズニーランドも、アクセスが悪い
「たとえば、夏にはフジロックフェスティバルが毎年開催されています。とんでもなくアクセスの悪い場所なのに、みんなせっせと出向きますよね。同様のことは、ディズニーランドでも起きています。東京駅で長い乗り換えをしてはじめて、舞浜駅に着く。
遠い。でも行きたい!それは両者ともどうしたら楽しみ尽くせるか、に主眼が置かれているから。」
サーフィンも、湘南を楽しむ1日として、パッケージングしてあげます。つまりは、サーフィンはある種の“言い訳“で、実際は湘南に遊びにいくのだと。波乗りそれ自体ではなく、1日を楽しむ方に振り切ってみるというアイデアが浮かびます。
観光ガイドも一日ですべて回りきらない方がいい
東京ディズニーランドは、日本人が全力で歩き続けて、1日で8割見て回れるぐらいに設計されています。「もう一回くるか」という仕掛けになっていると。全部は見られないけれど、ある程度楽しいみたいな。
この全てを見られなかった、ということから、人々は「全てを知りたい」「どの組み合わせが良いのか探したい」という好奇心を芽生えさせ、その好奇心こそが戻ってくる原動力になるのです。
湘南でも同じ。「楽しみ尽くしたな」と感じてしまうと卒業してしまいます。なので、全ては敢えて出し切らない。(そもそも街を1日で全て楽しむということに無理があるのですけどね)
サーフポイントも初心者向けで楽しみつつ、ある程度できるようになったら別のポイントもあるんだよって教えてあげて、奥の深さを常に見せ続ける。
この、ディズニーランドが8割しか回れていないということは、地図のエリアで行けていない部分が明確にわかるので認知しやすい。一方で、街を楽しむのは体験できなかった選択肢を明示しないと、参加者に伝わらない。例えば休憩として甘味を食べるときに、選択肢を2つ用意する。パフェか、かき氷。どちらかを選んでもらうことで、もう1つは選択肢なかったことが明示的にわかります。すると、選択しなかった方を試してみたくなる。
人の好奇心というのは、そういうものです。
ポイントとしては、冒険。
「サーフィンをして東京に帰って、またたまに湘南に帰ってくるとき、その返ってくるまでの間に、「湘南にいったらあれしたいな、これしたいな」といかに妄想してもらえるか。そこで思い出してもらえるかが勝負だと思うんですね。
ここでコーヒーを飲んでゆっくりしてから行く、もよし、疲れて着替えてぷらっと甘いケーキを食べに行くでもよし。究極的には、サーフィンをしている瞬間すら、その次の最高の瞬間を楽しむための準備だ、ぐらいの位置づけにすると、いいんじゃないでしょうか。」
whyと、“聞いてみる”の話
佐藤さんより質問。「おかえりといって欲しくて来てくれたのか、それとも甘い物を罪悪感なしに食べたくてきてくれたのか。どこで判断すればいいんですか?」と。
それは、デザイン思考の得意な“聞いてみる”から始めようと河上はいいます。
答えを知っているのは、世界でもお客様しかないので、なんでもお客様に聞いてみると。
また、「ゴールデンサークルという考え方が世の中にあります。WhyとWhatとあって、whatはサーフィン。じゃあ、なぜサーフィンの先生をしているの?という問いかけには、whyがうまく見つかってないと。でも、なぜサーフィンの先生を、他の方とは違う形でやっているのか、その結果、最高のサービスがこうやってできていると伝えられると、信用度はすごくアップします。
Appleはこれがすごく上手いんです。「デザインで世界を変える」と、whyに答えているから。一方で、富士通やNECは、「一番早いコンピュータができました。買ってね」みたいにwhyに答えられていないのです。佐藤さんでいうなら、「お帰りなさい」のスイッチを押してあげるところや、なぜ自分がサーフィンの先生をしているのか、どんな世界を見せたいのかがwhyの部分。」そこを探していくことが大事になります。
サーフィンスクールのwhyは?
「インサイト②の方に、whyを語るのであれば、下記になります。
Why:我々が行うことは、すべて、自分自身と向き合う時間を大切にするためにあります。
How:自分を知るために鏡として、日々表情を変える自然を相手にし、意志の力で限界まで体を使いこなすスポーツを提供します。
What:こうして、湘南に特別な時間を経験できるサーフィンスクールを作りました。
こんな感じ。」
Whyを見つけていくのは、ビジョン探しにもつながります。
Whyとビジョンの話は、長くなるので別でお届けしたいと思います。(続きではサーフィンの話題はでてこず、このwhy探しの話です)
次回は、whyの話を中心にお届けします。