DXは、遊びじゃない

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編集長の河上です。

注意: この投稿にはDXを実現するための暴論がいつもより強めに含まれています。

これを読むと、人によっては体調を崩して寝込むかもしれません。ご注意下さい。(笑)

 

趣旨は、なぜ日本企業はDXができないのか。

当たり前のように毎日目にする文字ですが、その本質を理解している報道関係者は皆無に見えます。

ビジポコでは、本質を惜しみなく抉り出します。正しくゴールを見据えて、きちんと前に進んでいきましょう。

 

まずはこちらの記事を読んでいただきたい。

政府CIO上席補佐官に聞く 「自治体DXを成功に導く10カ条」

さすが。政府CIO補佐官は良いことを言う。

でも、覚悟が足りない。

アカギという漫画では、「死ねば助かるのに」という一言がポロッと出てくる。

負けたくない、助かりたい。
そう思い、群がるベンダーに金を払って助けれくれ、そう叫んだところで、助かるわけがない。

いいかい。
そもそもDXなんてことは、ほとんどの企業ではやる必要がない。
それは自治体だって同じ。半数の自治体ではやる必要がない。

企業のDXは「創業しなおし」と同義だ。
企業であれば、全く別の会社として生まれ変わる。
GE、IBM、デュポン、富士フィルム、SONY、日立。こういった会社は昔の本業を捨てて、新しい分野に舵をきった。日立の子会社の整理の大鉈っぷりはすごいものがある。あそこまで機能組織として力を取り戻そうとすることが、どこまでできるだろうか。
個人の視点から見れば、昨日まで隣で働いていた人を、別部署、もしくは社外に送りだしてそれが当たり前だと思えるだろうか。

DXは生やさしいことじゃない。
生き残るためのあらゆる努力が必要になる。
そして、そのためのあらゆる犠牲をも厭わない覚悟と、そこまでしても得たい結果、目的がなければ進まない。
失うのは自分のキャリアかもしれないし、家族と過ごす時間かもしれない。
社名を失うこともあれば、仲の良かった上司が、部下が、愛した製品やサービスがなくなるかもしれない。
けれど、そういうことをしてまでも生き残るために変わる、それがDXだ。

実は10月頭からバタバタと複数社から、地方自治体むけに新規事業をやりたい、DX商品を作りたいと声がかかった。
結論から言うと、全てやんわりと断った。

彼らが売り付けようとしているのは不思議なことにどこも同じ。
・RPA
・ペーパーレス化
・web会議システム
・電子決済導入
・地域振興のための新規事業支援
こんなものだ。

呆れてものも言えないので、数千万円でなら引受けると返事をした。企業側にそこまでの本気度があるわけもなく、依頼は立ち消えになった。
こんな程度のこと、今までやり続けてきて結果が出ないのも知っているくせに、さらにDX風味にして自治体から金を搾り取ろうとするなんてことには、絶対に加担したくない、というのが本音だ。

さて、自治体諸君。そしてそこに住む市民の皆さん。そしてそこに法人住民税を納める企業の皆さん。
自分の管理する街、住む街は、働く街あと何年で消えてなくなる予定だろうか。
50年後も地図に名前を残す予定はあるだろうか。

わずか18年後の2040年には、日本国内でゴミ焼却プラントの新設可能数はほぼ0になるという試算が出されている。
人間がいなくなり、燃やすゴミがなくなるからだ。
いまこの瞬間でさえ、ゴミが足りなくてメンテナンスに時間をかけるということが起きている。

人が居なくなれば、当然自治体も、何をしているのか意味不明な地方議員も、彼らに払う数百万円もなくなる。

 

そして、その街は地図から消える。

 

 

僕らが次の世代のためにできることは、この撤退戦を戦い抜き、開拓した土地を熊さんや、鹿さんにかえし、限られた平野部で効率的に、つまり少ない税金でいまと同等のサービスを受けながら生活する状況を作ることだ。

それに本気で取り組むのであれば、ペーパーレスだの、RPAだのに金を払っている余裕はない。
本当にペーパーレスにしたいのなら、いますぐ複合機を建物から1台残らず捨てることだ。賃借料も、紙代も掛からなくなる。それがペーパーレスへの一番の近道だ。複合機に金を払いながらペーパーレスとか言うんじゃない。

RPAでできることは、システム化できる。
なんなら1500万円/人ぐらい払い、10人雇って中でどんどん作ればいい。
そしてsaasで他の市区町村に原価でおろせばいい。社会保険料を入れて1.8億円の人件費でシステム作って、500の市区町村に下ろせば、各市区町村は年間36万円だ。
そこにサーバー代やらなんやら載せたって100万円/年間ぐらいで収まるだろう。
5000人ぐらいの町村だって、1人200円で行政のシステムが賄える。これなら安いもんだ。
金はそういうふうに使うものだ。

そして企業が推奨するのはこういう進め方しかない。なぜなら、これを本気でやる自治体が出てきてしまったら、各自治体から2000万円とろうということは破綻するからだ。

 

RPAなんてのは、下の下の下の下の策だ。金を払う価値があるとすれば、変わるための余裕を生み出すためであり、時間を金で買うためだ。
行政は採用上限が決まっているので、物理的に職員の時間を空けなければ何もできない。その時間を買うためだけに捨て銭として使うのなら、それは理解できる。

 

だけど、RPAでDXが終わっただなんて思わないで欲しい。
そんなことなのであれば、今と何も変えず、ひっそりと地図から、人の記憶から消えてほしい。

 

 

さて、あらためて記事を読むと、おそらくこのCIO補佐官は分かっている。
分かっていて、緩いことを言っている。

自治体が生き残るためには、物理的に人間が住んでいないといけない。
つまり近隣の市区町村を地図から消してでも、自分たちが生残ることを目指さなければならない。それが自治体がDXに取り掛かる最上位の目的になる。
そこまでの覚悟がなければ、職員数の確保に困る分だけを補えば良いので、なんちゃってDX(デジタル化)で十分事足りる。

これは企業にも全く同じことが当てはまる。その土地に人がいなくなれば、採用できずにビジネスが回らなくなる。もしくは、近所に引っ越してきてくれるほどに魅力的か、もしくは高額な給与を支払うことができれば回ると思うけれど、果たしてそれができるのだろうか。

 

 

DXを成功させるためには、まず、本当にDXをやるのかを明確に決めることだ。
それを議論するためには、不都合であっても事実をテーブルに載せて、解釈を考えて方向性をすり合わせていく必要がある。
この議論をするのに、ベンダーは要らない。金も要らない。必要なのは、これを議論して決めると認識することと、議論する時間と、向き合う気力だけだ。

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