宝物は自動販売機で売っていない

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ビジポコ藤田です。

 

私の実家は北海道で暮らすウニ屋さん(ウニは北方領土産)なのですが、稼働し始めたばかりのネットショップでウニが売り切れてしまいました。街ににぎわいが戻り、都心の鮨店に人が殺到しているものと思われます。おかげで公設市場のウニ価格が高騰し、手がでない価格になってしまいました。

 

そして売り切れたのはいいのですが、新規ビジネスは【取引】→【商売】→【事業】へと進化していくとも・・・!あなたの現在地は、いったいどこでしょうか?

 

また、事業開発のペルソナとは?

 

今回はデザイン思考によるウニ屋の成長シリーズをお届けします。初見の人でも学びが深いように頑張りますので、どうかよろしくお願いします!

ウニが売り切れた!

 

BASEで作ったウニ屋のネットショップが2021年10月に最初のお客様をお迎えしてから2週間。ウニがあっという間に売り切れ、ネットショップにストップがかけられました。残念です。実は、私藤田はウニの売り子さんが意外と向いているんじゃないだろうかという気がしてきました。

 

なぜなら、私は個人で楽しんでいるメルカリが大好きで(ネットショップはBASEにあります)、小さなコミュニケーションがとても楽しいのです。

 

「いらっしゃいいらっしゃい」

「500円値引いてくれませんか?」

「うーん、300円だったら良いですよ」

「やったぁ買います」

「まいどありぃ!」

 

こんな小さなコミュニケーションを楽しんでいるのです。ちなみに私の夫はこれを心からバカにします。

 

メルカリ民には2種類いるのです。もう値引き交渉も面倒だし、したくもないし、してほしくもないという人達。生産性が高く、時給換算したら300円引いてもらうなんてバカバカしくてできないという人達ですね。

 

一方で、「100円引いてくれ」とか「もっと良く見せて」とか、小さなことをあれこれ言う方もいますよね。メルカリのあるあるだと思います。言われる側は非常に手間だとは思うのですが、実はそれを言われるのが楽しい人もいるのです。そう、私です。仮に値引きができないものでも、10円だけ引いてあげると喜んで買っていく人がいて、喜んでもらえて嬉しい人もいます。

 

この話をビジポコ編集会議で出したところ、河上はデザイン思考で考えて・・・

 

10円引いただけで売れると。それは『コミュニケーションに応じてくれる人から買いたい』という人達がいることの現れですね」

 

と教えてくれたのです!

 

「メルカリでたった10円引いてあげたら売れる現象。非合理に見えますが、デザイン思考では相手の『理』をまず考えます。なぜそのような行動を取るのか。何の理に合わせているのか。すると「コミュニケーションに応じてくれる相手から買いたい」という理が見えてきます。応じてくれる人から買いたいという観点から考えると、値段が10円しか下がらなくても買うのは、それほどおかしな行動ではないとわかります。値段は重要ではなく、応じてくれたことが大事なので売れるのです。」

 

日本人が仕事好きな理由

 

なるほど、私はもう10年近く家に引きこもって仕事をしているのですが、コミュニケーションは極めて苦手です。でも、人と関わりたい欲は人並み以上にあります。だから、売り手としてのメルカリやウニのネットショップが楽しくて仕方ないのかも。お客様との瞬間的なコミュニケーションが、仮にそれが瞬間的なものであっても、人と交わる喜びに変わって、嬉しくてたまらないのです。私、売り子さん向いてるかも・・・。

 

河上は、「日本人が仕事好きな理由のひとつですね」と教えてくれました。

 

価値観とペルソナ

 

河上は事業開発とペルソナについても教えてくれました。

 

「他人の理がわかると、価値観が見えてきます。たとえば、誕生日パーティをどこでやるかという行為ひとつとっても、「3000円払ってマクドナルドで祝う」人もいれば、「3万円でウニを買って、ウニパーティを行う」人もいます。

マクドナルドを選ぶ人は、「3000円というコスパ最強で楽しい」と思うわけですし、ウニを選ぶ人は「ウニはこんなに美味しいのに・・・」と思うわけです。

もう少し深掘りすると、マクドナルドを選ぶ人の価値観は、「1円あたりの楽しさ」を追求しています。ウニを選ぶ人の価値観では、「集まった全員がウニを同じように美味しいと感じることで同じ価値観を共有していると確認する」ことを重視しています。もちろん表面的な味の美味しさでテンションが上がるといったことはあるでしょうが、sの根底に流れる”価値観”が重要なのです。

この両者は、価値観が全く違うので混ざり合うことはありません。ただ、そこでマクドナルドなんて!と相手の価値観を理解できないと、見下しになってしまって、事業開発はうまくいきません。」

 

「ここで、相手の価値観が見えてくれば、その人たちに向けた新規事業が考えられるのです。つまり、事業開発のペルソナになってくれます」

 

「ペルソナとは、もともとパソコンのソフトウェアを作るときに出てきた概念。それをある日、広告屋さんが便利だと使い始めました。そこからさらに広がっていったので、広告用のペルソナを、事業開発むけに誤解して使っているのです。もともとの、物作り/事業作りのペルソナの使い方を知ると、すごく考えやすくなります。広告用のペルソナを、さらに事業作りに無理に転用しているので、うまくいかないのです。もともとに立ち返れば、なんてことはなく、便利に使えます。」

 

宝物は自販機で売っていない

 

さて、売り切れを起こしたわがネットショップ。ウニが売れるとうちの夫はすぐに「事業拡大!」「システム化!」「自動化!」と目を輝かせます。うるさくて仕方ないのですが、私はもっとゆっくりと手売りがしたいのです。コミュニケーションが楽しいのと、何よりウニはゆっくり味わって感動をかみしめながら食べる大自然の恵みだから。

 

もともと我が家は神戸に住んでいました。父親がロシア語の通訳で、中古車を輸出する仕事をしていたのです。しかし阪神淡路大震災で神戸港がやられ、親は北海道、私は東京、弟は神戸と、家族がバラバラになりました。それから長い年月が経ち、とてもとても苦労したけれど、今は公設市場や根室市のふるさと納税でいろいろな方に喜ばれています。都会で頑張っている方にうちのウニを食べて「生きていて良かった!」と思ってもらいたい、そんな気持ちでやっているのです。

 

だから、自動化機械化システム化といわれても、そもそも自動販売機で宝物は売っていないのです。ごめんよ夫。

 

【取引】【商い】【事業】への進化

 

そして、売り切れになったといっても、「どこから来たお客さんか、そのルートに再現性があるのかでその後の話が変わってきます」と編集長の河上。お客様に聞いてみると(デザイン思考では聞くことから始まります)、

 

  • ふるさと納税で買って良かったから
  • 前からのSNSフォロワーだから
  • 最近SNSをフォローして共感したから

 

という方が多かったです。すると「ふるさと納税経由は、商いレベル。一方で、SNS関連はある種の縁故なので、取引レベル。取引レベルは、例えば、ご祝儀で売れているような感じですね」と編集長河上はいいます。そう、いまは【取引】レベルだと。

 

そもそも新規事業は、

 

【取引】売ったら売れた段階。知り合いに売れる

【商い】ウニ屋さんとして出会った、もともと知らない人に定期的に売れる段階

【事業】”ウニ屋”が仕組みになってきて、他人に任せられる段階

 

このような進化を遂げるのだそう。それぞれに壁があって、ギアチェンジをする必要があるとのことでした。なるほどぉ。私はどうもビジネスをゲーム感覚で伸ばしてく人が苦手だったのですが、それはゲームのルールが見えていなかったかもしれない!!!!

 

まず、私は宝物を取り扱っているので、【取引】はクリア。

ここからギアチェンジして、ウニ屋さんとして出会った知らない人たちに、安定的にウニが売れるようになったら【商い】が成立。

 

他でもないこのビジポコは編集長河上にとって【商い】の一環だと河上は言います。「保険の外交員を考えるとわかりやすいですよ。知り合いや家族に一通り入ってもらった状態が取引。そこから知らない人に入ってもらうにはハードルがありますよね。ここで脱落する人も多いのです」

 

なるほど!!!!!わかりやすい!!!ゲームのルールが見えてきた!

ゲームのルールブックを持っていないから攻略もできなかったんだ!見えたらクリアが近付く!見えないゲームのルールが見えるデザイン思考すごい!

 

最後に

 

そして、ウニが売り切れたのは市場価格の高騰によるものです。一年の赤字を年末に回収するビジネスモデルとしてウニ屋はこれから年末にかけて火のついた忙しさになります。100グラム6000円、4人前500gで3万円のウニが売り切れ、現在買おうとすると10万円以上します。さすがに個人様に10万円でウニは売れないので、ネットショップは品切れ・・・。

 

ところが、編集長の河上は「年末特別贈答品として12万円で売ればどうか?」と教えてくれました。「贈答品は、手に入らない入手不可能性が高ければ高いほど、私のために手間をかけて手に入れてくれたのだと価値を高めます」とのこと。じゅじゅじゅじゅうにまんえん・・・!

 

さて、どうなるのでしょうか・・・!?

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ライター藤田は、ウニ屋の娘です。創業者である母親が国の専業主婦1円起業枠でゼロから立ち上げた北海道根室市のウニ屋の娘で、ディスカッションを楽しく学びある記事に仕上げます。

 

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