NIKEは靴を通じて何を提供し、ウニ屋は何の役に立っているのか?

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ビジポコライター藤田です。

世界を牛耳るGAFAがどんな仕組みで強くなっているのか、関心があるのではないでしょうか。先日ビジポコ編集長河上に教えてもらったのですが、彼らにはそれぞれ価値を問い直す部署があるそうです。

 

Google(アルファベット)・・・知とは何なのか?

Apple・・・デザインとは何なのか?

Facebook(メタ)・・・つながりとは何なのか?

Amazon・・・ECとは何なのか?

 

そして、実は世界のスニーカーブランドNIKEにも「靴とは何か?」を問い直したそうです。彼らが得た答えは「走りを通じて自分をもっと好きになる」存在が靴であると。(参考記事

 

デザイン思考では、この「問い直し」が実は重要だと河上はいいます。というわけで、私は実家の商売であるウニを問い直してみました。

 

「ウニとは何か!?」

 

今回のビジポコは、ウニとは何なのか。ちくちく、トゲトゲ、以外に何があるのか。。。ぜひご自身のプロダクトを問い直していただきたいです!

ウニは「生きていて良かった!」が価値

 

私の実家は北海道でエゾバフンウニの加工と卸をしています。我が家は神戸出身なのですが、1995年の阪神淡路大震災をきっかけに家族が北海道・東京・神戸とバラバラに・・・それから20年以上が経ち、とても苦労したけれど、うちのウニを食べて「生きていた良かった!」とお客さんに思ってもらいたい・・・そんな気持ちでやっています。

 

そう、ウニの価値は「生きていて良かった!」なのです。食べ物なのだから、「美味しい」でいいじゃんと思うじゃないですか。しかし美味しいは価値じゃ“ない“  のです。役立ってこそ価値だとデザイン思考では考えます。

 

パッケージを開けたときの興奮や、見た目が綺麗で映えるとか美味しそうとかだけでなく、口の中までデリバリ(運ぶ)したときの「感動」を届ける。

食べてみて、しみじみと「生きていて良かった!」と思えるその一瞬に至るまでの全てを、設計すること・・・。

 

たとえば、「スニーカーとは何か?」と問い直したNIKEだったら、ランニングを頑張って靴底がすり減ったとき、「自分はここまで頑張った!やれたんだな。自分を好きになれそうだ」という感情や感動。自分が変わっていくという感覚。スニーカーとは何かと問い直したときに、物理的なスニーカー単体ではなく、新しい付加価値が生まれるというのです。

 

付加価値を生むために、どんな体験を提供すると喜ばれるか考える

 

工場を仕切る母は、編集長宅に送ったウニのことを「綺麗に詰めたウニ贈るで。ええ品やで」といいます。ウニの詰める技術は奥が深く、丁寧に美しく詰めた方が公設市場での価値が高くなるのです。

 

しかし、それはそれで興味深い話ではあるものの、役立つとは違う気がします。箱を開けたとき「わあ~映える~」というだけなら、映える食べ物は他にも無限にあります。しかし、なぜウニなのか。

ウニではなくては「生きていて良かった」まで持っていけないと、そのぐらいの体験を提供すれば、消費者は喜んで買ってくれます。そのために綺麗に箱に詰めるだけで良いのか、他にできることはないのか。ここを考えていくことで、ウニが物売りから体験売りに化けて、商売がより大きくなるのです。

 

バックキャストという考え方があります。先にありたい姿を決めて、そこに到達するための進み方を考えるやり方です。

例えば、入りたい大学を決めて、そこに入学するためにはどうしたら良いのかを逆算していくのです。

 

デザイン思考は、これをビジネスで実現するための方法だと、編集長河上は言います。

顧客が喜んで買ってくれる体験をまず決めて、その体験を提供するための方法を考えていく。

お金になる売れる体験を探し出してゴールとして定めて、そこからあらゆる部分を逆算で設計していくのです。

 

わかるようで、わからないような。

ウニ屋ではどうなるのでしょう?

 

役に立つを売る

 

―美味しいを売るのではなく、役立つを売るー

 

上記はデザイン思考と出会った最初に私が学んで驚いたことでした。

画面越しに「美味しい」は伝わらないので、役立っていく。

 

たとえば、編集長河上はうちのウニを食べる際、酢飯に真剣に向き合ってみたそうです。細かいお酢の分量や砂糖や塩や、、、、こだわるポイントが無限にあって、単純ではいられないことがわかったそう。そして編集長にとってはそれが楽しくて、酢飯のお酢を選ぶことさえもウニパーティの大切な価値の1つだと言います。編集長にとっては。

 

しかし編集長みたいにこだわる人ばかりとは限りません。

消費者の方、購入者の方にウニをお渡ししても、もしかしたら賞味期限の切れたドロドロの醤油で食べちゃうかもしれない。それでは、届けたい価値が半減するかもしれない。

注文いただいてから、お客さまの口の中にまでデリバリして「生きていて良かった!」としみじみと感動してもらう。ウニ屋としてそこまでの範囲で責任を持つために、「何をすべきか」を考える必要があります。

 

たとえば、ウニを食べて「生きていて良かった」となるまで、さまざまなプロダクトさんたちのご協力が必要です。

 

  • お米
  • お米を炊くための水
  • お醤油
  • お酢
  • 砂糖
  • 海苔

 

だけでなく、

 

  • お茶碗
  • 箸置き
  • テーブルクロス
  • 醤油が少しこぼれるかもしれないのでナプキン

 

さらには

 

  • スマホで写真を撮る時用のライトと電球
  • ダイニングテーブルと椅子のセット

 

だって必要かもしれない!ウニを食べて「わあ~」「生きていてよかった」となってもらうためには、そこまで考える必要があると編集長の河上はいいます。しかも考えるだけならゼロ円。

 

そして、重要なことに、ここまでの”体験アイデア”を出し切ってから【引き算】で考えるのが大事だというのです。例えば、ウニパーティセットに仕立て上げるときに、ウニと共に何までをセットにするのか。

ダイニングテーブルと椅子もセットにする?

お茶碗はセットにする?

最高に美味しく味わえるスプーンをセットにする?

醤油は?

お酢は?

 

先程考えた、ウニを食べて「生きていて良かった」となるまでに必要そうなプロダクトさんたちのうち、どこまでをセットにする必要があるのかを、引き算で考えていく。この引き算がすごく大事だと、編集長は言うのです。(大事なことなので、2回)

 

以前私が悩んでいたように、「スタイリッシュな箱がええから、もっと都会的な包装紙はないかな」と考え出してパッケージ一覧を見出すと無限地獄に落ちてしまいます。

しかし、どんな体験を提供すると喜ばれるのかをまず考え抜いて、そこに必要なプロダクトさんたちを引き算して、最高に輝くウニとセットにすることで、無限地獄に落ちることなく、まっすぐ、最短距離を走れるようになります。

これがデザイン思考の強さなのです。

 

3つを行ったり来たり逆算するデザイン思考

 

さらに、河上はデザイン思考を教えてくれました。「人」「価値」「物理的なモノ」の3つを、逆算したり行ったり来たりして、本質に迫っていくのがデザイン思考だと。

 

ウニであれば「苦労している人」「生きていて良かったという感動」「うちのウニ+プロダクトさんたち」になります。提供したいサービスから、物理的に紐解いていくと、役立つを売るの本質が見えてきます。感動を届ける責任を果たすために、箸は必要かな、箸置きは?お米を1合ほど同梱する?など、次に打つ手が見えてくるのです。

 

たしかに、ウニだけぽつんとあっても和定食は完成しません。醤油ちゃん海苔ちゃん茶碗ちゃん。みんなの協力が必要です。でもその中でどこまでを同じバスに乗せていくか。引き算で考えていくことで、より考えにレバレッジをかけられると河上はいいます。

 

やみくもに考えても、時間をどんどん浪費してしまいますが、引き算だと考えやすくなるのです。

 

箱を開いてエゾバフンウニを取り出す。炊きたてのお米。ちょっと良い醤油と産地にこだわった海苔。お気に入りのお茶碗とお箸と箸置きを使って、お米に海苔を敷いてウニをたっぷりのせ、お醤油を垂らして完成!

 

おっと、早く食べたいけれど、ダイニングテーブルの前でウニ丼にライトを当て、しっかりと写真撮影。こんなに美味しい高級ウニを食べられるようになった自分を褒めてあげたい気持ちでパシャリ。SNSにも投稿して特別な一日を記録にのこす。一口目、期待以上の味が広がる。二口目、言葉が出ない。「ああ~生きていて良かった!」と実感!

 

きっと、細かく体験を見ていくと、こんな感じかもしれません。ウニはやはり高いものですから、こんなウニが食べられるようになった自分の頑張りを褒めたいですよね。SNSにも投稿して、特別な一日を記録に残したい・・・。

 

ウニを食べる体験を細かくみると、新たな価値が見えてきました!

 

「生きていて良かった!という感動の価値」+「こんな高級ウニを食べられるぐらい自分は頑張ったんだ!」という価値。

 

ウニもまた、自分を好きになるための、頑張ってきた自分を肯定するために役立つ存在なのかもしれません。

 

価値が、役立つの意味が、そして役立つことそのものが見えてきたかもしれません!そして、体験を通じて、「人」「価値」「物理的なモノ」を分けて考え、それぞれを行ったり来たりすることで、デザイン思考はよりパワーアップして役立ってくれます。

 

この話は貴重なので、次回に続きます。次回は、私藤田が再就職した先の職場で起こった、「めちゃくちゃ流行っていて来客が止まらない事務所」の話を通じて、デザイン思考の本質に迫っていきます!

 

編集後記(河上の雑記)

編集会議のあと、藤田さんから上がってくる記事を楽しみにしています。今回も、いい会議だったのですごく楽しみにしていたのですが、最後まで読み進めて「おぁあ〜〜〜〜〜」と声が出ました。

 

 

実はつい先日藤田さんのウニ屋さんでウニを買わせていただき、 ウニ冬の陣 を開催しました。(ちゃんと買ってます!)

今回の記事に書いてもらったのですが、当日はこんな感じでした。

近所のスーパーで寿司酢を買うのか、お酢を買って自分で寿司酢を作るのかを悩み、ネット検索してそれっぽいレシピを見つけて、塩、砂糖、お酢を買って帰る。家でお酢と合わせてみて、塩や砂糖の量に驚く。ベシャベシャにならないように炊けたご飯と手早く合わせて、海苔と醤油を持ち出して、テーブルに並べる。

 

準備ができたところで、ウニ開封の儀。

ひとしきり厚みのある盛りを楽しんだあと、Youtubeで学んだ食べ物の撮影の仕方を真似て、iPhoneのレンズ逆向きからライトを当てて撮影してみる。変化を知りたいのでライトを消して撮ると、なるほど確かにライトがあった方が美味しそうに見える。光が反射して、すごくみずみずしく写る。

ほーーーーっ、ライトって大事なのね。そう思いながらウニを抱えて、いそいそと食卓に着く。

 

 

家族を呼んで、「いただきます」

 

 

最初は醤油をたらさずに食べて、うわぁぁぁぁ。

食卓はしばらく無言。つけっぱなしのNetflixがうるさい。

「生きててよかった・・・・」

頭の中で、小さな自分が、小さな声でつぶやく。

 

これを、なんと火曜日の夜にやっていました。普通、平日からこんなことやりませんよね。笑

でもこの時に僕には、この楽しいパーティが必要だったのです。

 

 

実はこの冬の陣、大型契約が取れたことをきっかけに、よしお祝いだ!と奮発して開いたものです。

背伸びをして美味しいものを食べよう。

家で3万円のウニを飽きるほど食べてやろう。

頭にあったのは、こういうよこしまな心でした。

 

でも今回の記事で出逢ったインサイト。

「こんな高級ウニを食べられるぐらい自分は頑張ったんだ!」という価値

思わず、「あ」と「お」の中間の謎の感嘆を挙げながら、そうか、本当に欲しかったのはこれだ、これにお金を払ってウニを食べていたんだと気が付かされました。

 

今度、僕の記事で書きますが、人は自分が実現したいことや本音をはっきり意識して生きてはいません。

物理的なものに対して「ウニが食べたい!」「XXが欲しい!」と思うことはあります。でも、なぜウニを食べたいのか、という価値の部分や、ウニを食べることで手に入れたい体験、まさに本音の部分は実は本人でさえわかっていないものです。

「頑張ったんだ」という部分を、手垢のついた「自分へのご褒美」と古い言い回しで書かれると、それは違うなと感じる。でも頑張った証としてウニを味わう体験と言われると、しっくりくるものがあります。

 

 

これまでも、これからも、思わず見惚れるほど美しくウニを箱詰めする技術は根幹として残るはずです。

しかしそのままででは、物売りに止まり最後は価格勝負に巻き込まれます。不毛ですよね。こんなに素晴らしいものを提供しているのに。

そこで体験売りへと進化を目指すのですが、簡単ではない。

簡単ではないのは、ゴールを決めずにパッケージを探すような無限地獄に陥っているからです。そうではなく、売れる体験をゴールと定めて、ゴールから逆算して全体像を出し、さらにそこから引き算していく。デザイン思考ではこのように進むので、難しいものでも最短距離で手が届きます。

 

インサイトがずばり当たり、すごく感動してたくさん書いたのですが、価値を届けてお客さまを笑顔にすることほど、楽しいことはありません。そんな仕事を、そんな仕事に関わる人を1人でも増やしていきます。

また次回のビジポコでお会いしましょう。  編集長 河上泰之

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ライター藤田は、ウニ屋の娘です。創業者である母親が国の専業主婦1円起業枠でゼロから立ち上げた北海道根室市のウニ屋の娘で、ディスカッションを楽しく学びある記事に仕上げます。

 

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