
ビジポコ編集長に集客のコツを学ぶコーナーです。
前回のビジポコで、編集長河上はデザイン思考を教えてくれました。(参考リンク)それによると「人」「価値」「物理的なモノ」の3つを逆算したり行ったり来たりして、本質に迫っていくのがデザイン思考。今回は続きです。
自営業に限らず働いていると「お客さん来ないかな~」と思います。
お客さんがワンサカ押し寄せて、引っ張りだこになりたいと思うはず。行列ができて未来のお客さんが積み上がれば精神的に安定しますし、報われた気になりますし、なんだかモテた(?)ような錯覚を起こしますし、それまでの自分は正しかったんだという自己肯定感は悪いモノじゃありません。売上は自分を癒やしてくれます。
そして世にはお客さんが途切れず止まない、儲かってしょうがない会社も存在します。
お客さんが次々やってきてしょうがない実在する事務所の話をデザイン思考を通じて読み解き解体し、事業のヒントにしていきます!
新しいお客さんがひっきりなしの事務所
ライター藤田は、税理士事務所の事務員をしていました。地元に雇用があり、そこそこ社会的信用もあり、最初の給料は安いけれどもスキルになるかも?と考えたからです。
就職先はすごく忙しい事務所でした。新規のお客さんが次々とやってきて、紹介&紹介&紹介で売上がすごいのです。所長はレクサスを乗り回し、息子さんはタワマン住まい。事務所は家賃50万円をさらに倍へと増床し、職員さん達がフル稼働しても全然足りないぐらい、売上が上がってしょうがない事務所でした。
税理士事務所は税務の助言や記帳をし、ときに融資を引いたり補助金のアドバイスをしたり、保険を提案したり、いろいろ業務があります。その一方で事務所同士の競争も激しく、また法律上そんなに差別化ができないようにも感じます。そして、その事務所の方々も(こういってはなんですが)とてつもなくスキルが高いわけではなかったように記憶しています。
では、なぜ家賃50万円を短期で倍の100万円にしなければならないほど売れているのか。当時を振り返って印象的だったのは、お客様が来たときの対応です。
事務所のエレベーターが開いてお客さんの顔が見えると、職員さん全員が手をとめて立ち上がり「いらっしゃいませ!」と大歓迎するよう教育されているのです。そして綺麗な受付嬢がすっとんできて、ニコニコと話を聞きながら応接室に案内してくれます。
それだけ、といえばそれだけです。私の夫は「一般論として、お客なんてそんなもんだよ」といいます。
では私たちビジネスパーソンも仕事の手を止めて挨拶すればお客さんは次々やってきてくれるのでしょうか?
デザイン思考で分解し、自分のヒントにする
就職から10年が経ちビジポコの編集会議でこの話を編集長河上にぶつけてみました。河上はデザイン思考で考えて、「手を止めるということは、やってきた方を他のお客様より優先するってことですよね」と話し始めました。
「自分が来た瞬間に全員が手を止めて挨拶をしてくれる光景。それはお客様からしてみたら自分が最上級に大切にされてることが物理的に、目で見てわかるわけです。まさにVIPの気分を味わえる特別な一瞬なわけです。ちなみにこの真逆は、例えば市役所。受付で声をかけると、顔を見合わせて渋々出てくる笑。これだと、お客さんは自分が雑に扱われていると感じるのです。」
「全員の挨拶と綺麗な受付嬢の対応という物理的なサービスから、VIP気分を味わえてハマるキャラクターを逆算すると、遊び慣れていない普通の社長さんがイメージできます。例えばキャバクラ嬢を秘書として雇うなんてことは、もちろんしない。
逆にハマらないのは、会社のお金でテキーラパーティを開くようなイケイケの社長や、ゴリゴリに節税をしたい人。節税したい人が事務所職員全員が手を止めて挨拶したら、なんだお前ら。手を止めずに働け、と嫌な気分になるでしょう。」
「遊び慣れていない普通の社長さんとは、真面目な普通の人です。税務署に目をつけられるようなギリギリの節税や目立つことは避けて、そこそこ真面目に納税したいと心から思っています。税務調査、怖いですもの。適法に納税できればいいので、税理士にも高い能力は求めない。ちゃんと納税できればそれでいいので、節税技術はそこまで必要ないし、法律がわかっていて書類を作ってくれればそれで十分。そのため、普通の税理士事務所ならどこでもでいいのです。」
では、どこで差がつくのか?
「その差がつくポイントが、事務所に入った瞬間に全員が手を止めて満面の笑顔で挨拶をしてくれて、綺麗な受付嬢が走り寄ってきてくれる自分が特別な人だと感じるその『体験』なわけです。税務内容で選ぶのならどこの事務所でも良くても、心がピョンピョンする瞬間があれば、特定の事務所にハマるわけです。」
「税金のことだから・・・大事な仕事だから・・・という言い訳を自分にもして、毎月足繁く通う姿がイメージできます。」
「行列の鍵は、そもそも人数(絶対数)の多い普通の社長さんをターゲットにしていること。もう1つが節税を売りにしていないこと。新しい節税方法は目立つと税務署に封殺されるので、クチコミに乗らない。でも、普通に納税していて、単純に挨拶が心地よいと思っているだけなら、それはちょっとした話のタネになり、ガンガン口コミされるのです」
なるほど!街の普通の社長さんを集客するのに成功している訳ですね!その社長さんが社長仲間に「最近よく税理士事務所に行ってるね。会計なんてどこでも同じでしょ?」と聞かれ「いやあ、あそこの事務所にいくと気分が良くてさ。」という。それが口コミになって、他の社長さんも「どれどれ」と訪問してみる、そして気分が向上してハマる・・・それが集客につながっているのですね!
ぎょっとさせる
デザイン思考で以前「ぎょっ」とさせるのが大切だと教わりました。その事務所に訪問するとそれはそれは歓待を受け、ある意味で「ぎょっ」としているのです。愛人を雇うわけでもなく、いきすぎた節税をするわけでもなく、まっとうにやっている社長さん。VIP待遇に慣れていないので、ぎょっとしてしまう。それがスコンとハマったのですね。
編集長河上は、「人」「価値」「物理的なモノ」の3つを行ったり来たりして、本質に迫っていくのがデザイン思考だと教えてくれました。
前回は、提供したい体験から物理的に紐解いていくことをを教わりましたが、今回は、「物理的なモノ→価値→人」の順番ですでにあるサービスから逆算して考えると習いました。
「人→価値→物理的なモノ」「物理的なモノ→価値→人」行ったり来たりできるようになると、デザイン思考上級者だと言います。
人と価値とモノと。
ここでいうなら、得たい結果(次々と集客)と、提供するべき価値(特別大切なお客様として扱われる)、物理的なモノ(元気のよい挨拶)を行ったり来たりして、自分の事業のヒントとなるのです。
闇雲に挨拶してはダメ
デザイン思考では、最初に「お客さんに話を聞こう」と提案します。誰を対象にするか考える必要があるのです。人が買ってくれそうな体験を価値として探していきます。価値が決まると、適切にデリバリするための物理的なサービスや製品を考えれば良いのです。
人が何に価値を感じるのか。何にお金を払うのか。
ウニでいうなら、ウニに喜ぶ人がいて、パッケージを開けた瞬間か。それとも一口食べた瞬間なのか。「人」「価値」「物理的なモノ」を分けて考え、行ったり来たりすることで、売れていくためのパズルをはめていくと。
つまり、ウニ屋が税理士事務所の真似をして、闇雲に挨拶をしまくってもダメなのです。
戦略なのか偶然なのか。
その税理士事務所はターゲットが街の普通の社長さんだったからこそ、ぴたりとハマったというのです。
ウニ屋が価値提供しまくるには・・・!?
ところで、自社のウニを食べて「生きていてよかった!」と思ってもらいたいですし、「こんなに高いウニを食べられる自分は頑張ったんだな」とお客さんご自身をめちゃめちゃ肯定してもらいたい。それがウニの価値だと今は思っています。
そのためには、パッケージがへぼいとかそういう次元の話でもめている場合ではなく、本質的な価値提供のために物理的に何を準備するか、という話になります。
お客さんが高いウニを取り寄せて買うときには、「生きていて良かった」&「こんなに自分は頑張ったんだ」という感動を買っているわけですから。
すると、映えさせるために木箱に刻印を入れて理想的な写真うつりの角度を伝わりやすいようにするとか、写真撮影に使えるちょっとしたテーブルクロスを同梱するとか。あるいは、お米を1合か2合、同梱しても良いかも・・・。
自分自身が、「こんなに自分は頑張ったんだな」と感じる瞬間はいつなのか。
その体験から導ける何かがあるのだと今は思っています。