AOKIのパジャマスーツを新規事業コンサルが斬ると!?

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紳士服のAOKIが、パジャマスーツという商品を出しました

コロナ禍の「リモートワークでゴロゴロしていたいけど、Web会議の時だけはシャキッとしたい」というニーズをとらえたジャージ素材のスーツです。そしてなんと100億円売り上げたと報道されています。

パジャマスーツは、8つのシーンが想定されているそうです。「仕事」「旅行」「お散歩」「リモートワーク」「お買い物」「カフェ」「昼寝」「ゴルフ」。もうやりたい放題。少しだけちゃんとして見えるジャージ素材のスーツ。すごく面白いです。

 

これまでも、「洗えるスーツ」「寝っ転がれるスーツ」などの商品は、スーツメーカーが出していたような気がします。しかしこのパジャマスーツは、新規事業の学びとしてとても深いものが潜んでいます。

 

そこで、ビジポコ編集長・河上に、このパジャマスーツがどれだけ優れていて、新規事業としてのお手本のようだということを解説してもらいました。デザイン思考に優れ、DXや新規事業のコンサルである河上は、パジャマスーツをどう分析するのでしょうか!?

 

【ビジポコの学び】

  • 本質的な価値を問い直そう
  • 1分で伝わる物語を作ろう
  • 伝えたくなるのはよいアイデア
  • お客様に聞いてみよう

 

1分で伝わる物語。楽しくなるのは良いアイデアだから

 

紳士服のAOKIが出したパジャマスーツ。そのニュースを見たとき思わず少し笑ってしまいました。確かに家でのんびり仕事をしながら、Web会議の時だけきちんとして見せたい、そういうニーズは思い当たる節があるからです。

 

そして近所のAOKIの前を通ったとき、そばにいた人にパジャマスーツについて伝えました。

 

「リモートワークでゴロゴロして、Web会議の時だけシャキッとする用のジャージ素材のスーツが発売されたんだって!パジャマスーツだって~」

 

と。他でもない新規事業を考えるとき、この「伝えたくなる話」が何より重要だとこのビジポコではお伝えしています。まさに自然な口コミをしてしまっており、1分で伝わる物語だ!と、自分で伝えて自分で興奮してしまいました。

 

1分で伝わるのがポイントで、1分以上は複雑すぎて伝わらないのです。私が夫に話したのは15秒ぐらいなものです。たったそれだけで、解いている課題、主な用途、驚きポイントとしての素材、商品名と5個も伝えているのです。

 

そもそも新しい商品は、話が広まらない限りは売れません。そして人が思わず誰かに伝えたくなり、かつ大きく売れているのは、そもそのもパジャマスーツのアイデアが秀逸な証拠だと、編集長河上は指摘します。

 

“価値の問い直し“から始まる

 

そして河上に伝えたところ「そもそもスーツの価値とは?から始まっていますね」とのこと。

スーツの価値・・・スーツの価値を問い直す。この問い直しも、新規事業ではとても大切な作業。

 

靴を問い直したNIKE、買い物を問い直したAmazon、知を問い直したGoogle、つながりを問い直したFacebook、デザインを問い直したApple。

 

そして、私も実家のウニを問い直しています。

 

「スーツとはなんぞや!?」

 

その答えは河上いわく

 

「仕事に向き合ってる感、であり、まわりへのアピール」

 

だといいます。河上は、ここにこそ革命が潜んでいる、といいます。

「過去のスーツは、着ている人だけのことを考えていました。素材は生地だ。オーダーメイドは本人の体に合わせて。洗濯可能なものは購入して使っている人のメンテナンスのしやすさ。安さは、何よりも買う人を考えていた。これらは、買った人が、使うときの利便性や満足度を追求していました。」

「それが、zoomで会話する相手が、『あ、この人は仕事に真面目に向き合うんだな』と勘違いさせる道具という位置付けに整理した。ここが革命的です。使う本人の感性を狙うのではなく、きている姿を見る周囲の人の感性を狙いにいく。大きな転換です」

「でもこれは、スーツがはじめからはっきしていた価値でした。スーツだけではありません。ピカピカに磨いた革靴も同じ価値を発揮します。そこに気がつけたこと、そして会社として意思決定できたことが、本当にすごいことなのです」

 

紳士服のAOKIは、スーツの価値の問い直しに成功したわけですね!

 

 

洗えるスーツや寝転がれるスーツと何が違う?

 

でも、従来から洗えるスーツや寝っ転がれるスーツは市場に存在しました。コロナ禍でリモートワークが浸透したという理由以外に違いとして何が考えられるのでしょうか?

たとえば、ジャージ素材であること。直接パジャマスーツを見ると、ジャージ生地の印象でスーツ感はないのでしょう。しかし、パソコンの低画素数のWebカメラ越しならジャージ素材でもそれほど違和感がないのです。

 

そして、この本質的な価値「向き合ってる感」が出せるのであれば、ジャージ生地でもいいじゃないか。だってそのほうが楽じゃん。

 

これは素人が考えれば、すぐに辿り着きそうなものです。しかしスーツのプロから見ると「スーツはちゃんとしたウールの繊維で・・・」とプロだからこそのこだわりが生まれます。

そうしたガチガチに頭が硬くなった専門家が、ジャージでいくことを良しとして、会社の看板を背負わせて発売したこと。それが、新規事業の専門家である河上から見て、一番優れたところだというのです。

 

 

パジャマスーツは名前もあえて付けている

 

報道によりますと、パジャマスーツという名前も、あえてスーツと真逆のパジャマを持ってきてネーミングしたとされています。ジャージスーツでも良かったかもしれませんが、あえてのパジャマスーツ。パジャマとスーツをくっつけることでより1分ストーリー(物語)を生み出せるのです。

 

新規事業コンサルの河上から見ると、スーツ屋が物理的に提供するものはスーツでありながら、スーツの価値を問い直すと「仕事に向き合っていますという対外的なアピール」になります。ビジネスでちゃんとしてる感、向き合ってる感を価値提供として定義して考え直すと、zoomの背景のなんちゃって本棚、まるでメモをとっているかのようなタイピング音声など新商品のタネはいくらでもある、といいます。

 

「仕事に向き合っていますという対外的なアピール」を、非対面での仕事で発揮するために何ができるのか、次々に商品が出てくるとAOKIは瀕死のスーツ屋から、DXが実現できたと言えます。

別れ道は、AOKI自身が、自分たちのすごさをどの程度認識しているか。ジョークグッズに近いこのパジャマスーツという商品を紳士服屋が作ったことが素晴らしさをどこまで自覚できているか、です。

 

これはジョークグッズという意味では、「トヨタがラジコンカーを出すぐらいのインパクト」だと河上はいいます。確かに!!!!

 

 

スーツの価値の問い直し

 

ベンチャー企業の人などはスーツをほとんど着ません。ご時世柄あえてスーツを着る人とは? と問い直したとき、「スーツを着ている自分」ではなく、「スーツを着ている自分を見た人が嬉しい」という価値も浮かび上がります。

 

Web会議ではスーツの人もオフィスカジュアルも普段着の人もいるかもしれませんが、営業マンのテレカンは全員がスーツです。誰に対しての価値を発揮するか、そこがコロナで変化し、変化を感じ取ったAOKIがパジャマスーツを開発にいたったのではないでしょうか。

 

仕事に向き合っている感覚。スーツを着ている人や靴をピカピカに磨いている人をみると、「自分との打ち合わせの前にしっかり準備してくれたんだな」という気持ちが起こって、相対する側は喜びます。そうした喜んでもらえる感がお金を払って商品を買っている人が得たい体験です。これこそが、本当のAOKIの利益の源泉なのでしょう。

 

 

パジャマスーツはとてもいいアイデア!

 

紳士服のAOKIが出したパジャマスーツ。100億円売れているそうです。ニュースで見たときに印象が深くて、忘れられないばかりか、店の前を通ると伝えたくなってしまう。スーツの価値とは何か?根本的に問い直したということ。

 

  • 本質的な価値を問い直そう
  • 1分で伝わる物語を作ろう
  • 伝えたくなるのはよいアイデア

 

まるでビジポコで習ってきたことがそのまま再現されたかのような、お手本のような新規事業!すごいぞパジャマスーツ。ここに、

 

  • お客様に聞いてみよう

 

というデザイン思考が相まって、もしかしたらAOKIは本当にヒアリングしたのか、自分たちで観察して「リモートワークでゴロゴロしてるけど、Web会議でだけはシャキッと見せたい」というインサイト(本音)を発見したのかはわかりませんが、この聞いて観察するという行為から取りかかったのかも。

 

いずれにせよ、とても良いですね。うーん、欲しくなる!

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ライター藤田は、ウニ屋の娘です。創業者である母親が国の専業主婦1円起業枠でゼロから立ち上げた北海道根室市のウニ屋の娘で、ディスカッションを楽しく学びある記事に仕上げます。

 

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