Googleには業務マニュアルがないという話

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ビジポコ編集長・河上です。

 

『プランB』という言葉があります。

プランBを辞書で引くと「これまで続けてきた計画がとん挫したときに発動される次善の策。代替プラン」との説明があります。物事はただ順調に進むだけではないので、次善策を打っておくのは大切です。

 

しかし、日本人にはプランBがなく、Aしかないという話を聞いたことがありませんか?

BもなくCもなく、プランA。つまり順調に進んだときのことしか計画の中に存在しないのです。

 

昔、宮本武蔵という剣豪がいましたが、日本刀の扱いがうまく非常に強かったと。

周りがみんな剣で戦っているなら、職人芸的に剣を突き詰め、剣の道を極めていくことは、価値があります。しかし、30キロ先まで砲弾が飛んでいく現代戦の場合、宮本武蔵がいくら剣の道を極めても、勝てるかというと別の話です。

 

現代のDXも同じです。

「DXしたい」という社長さんに「あと何年会社をやるのですか?」と聞くと「後継者がいないので5年かな~」という答えが返ってくる。20年30年続けるなら、創業しなおしとしてのDXは必要です。しかしあと5年で会社をたたむなら、必要なのはDXではない場合が多いのです。

 

目的を達成するためにではなく、DXを導入するためのDXになってしまっています。

今回のビジポコは「Googleには業務マニュアルがない」という話を軸にしながら、プランBの作り方を見ていきます。

Googleは業務マニュアルがない

 

Googleの中の人と話したとき、彼らは「業務マニュアルがない」といっていました。驚くべきことで、業務マニュアルがないということは引き継ぎもないし、あるのは本人のタスクだけなのです。

 

 

では仕事はどう進めるかというと、自由に本人が考えます。ただ上司から「今年は優秀なエンジニアを10人採用してほしい」という『目標』が下りてくるのみ。業務マニュアルがなく、あるのは目標達成だけ。目標達成だけを考えてよいのです。

 

優秀なエンジニアを10人といわれて、どのように優秀さを測り、定義するかはその人の自由。日本企業のようにマニュアルがみっちりで、●●大学以下は弾いて、とかSPIで▼▼傾向がある人を弾いて、不採用にして、お祈りメールはこのテンプレートで…といった業務マニュアルがないのです。

 

応募者との連絡も、選考プロセスも、お祈りメールも、すべて自分で考えて行います。そして翌年には「今年は優秀なエンジニアを100人採用してほしい」と目標が下りてくるのです。再現性もなく、引き継ぎも不要で、毎年、『目標』だけがやってきて、それに対応しているうちに1年が過ぎていくと。

 

毎年、上司が得たい結果は異なるわけです。社会情勢や自社・自部門が何人採用したいかはその年によって変わるので、毎年の下りてくる目標も異なります。ちょっとずつ変わる目標に対して、毎年同じ業務マニュアルで対応しようとする日本企業と、目標だけ与えてあとは自分で考えさせる米国企業Google。

 

目的の問い直し

 

この日本とアメリカの差は、さまざまなところで表出します。

まさにこの例からもわかるように、日本は業務マニュアルを作って実行することに長け、そして目標の意味を問うことが苦手なのです。

 

日本企業では手段が目的化してしまうのです。お祈りメールを送るための仕事をしてしまう。DXだ!といいながらベンダーの言いなりになってホームページにチャットボットを入れてしまう。「そもそも問い合わせがすごく多いのは、マニュアルが読まれていないのでは?」とか「電話番号はすべて閉じてしまっていいのでは?」という発想の転換、本質への問い直しが生まれづらくなっています

 

「なぜこの業務をしているのですか? 」

 

と問われたとき、答えられないのです。あるいは「引き継いだのでやっています」としか答えることができない…。なぜその業務があるのか本質を問うこともなければ、考えもしない、ただロボットになってマニュアルを遂行するだけなのが日本企業での仕事です。

 

東京電力では3.11のあと、それまでのじゃぶじゃぶ体質からコスト低減文化へ変化しようと決意をしました。

真逆の文化に変えていくために、彼らはトヨタ自動車から人を招いて、トヨタ式カイゼンを導入しました。その現場で何が起きていたかというと、たった一言、同じ問いを投げかけを続けただけだと言います。

 

「なぜこの業務をしているのですか? 」

 

そして2秒で答えが返ってこないなら、その業務を止めていいと指示するのです。やってる人も意味を理解していない業務なら、そもそもやる意味がないと。やめた結果、仮に他からクレームが来たら、本当にそれを自部門で引き受けるべきか「問い直し」を行うのです。

 

日本人はもっと問い直そう

 

目標達成が仕事であり、業務マニュアルを忠実にこなすことは仕事ではないのです。でも、業務マニュアルを遂行することを仕事だと思い込んでいる人は大勢います。目標を達成するためには、仕事の目的を問うことが大切で、さらには「問い直し」が必要です。

 

業務が決まっていなくても、10倍(テンエックス)を目指すというテンエックスの発想でGoogleは動いています。仮に車を作るとして、コストが高くなったらじゃあ製造ラインをとっかえようとか、中国に委託して工場を作らせようとか。この国にはそういう発想がありません。仕事をどうとらえるかは個人の問題でもあります。「きついな~」と思うか「業務マニュアルを遂行するのが仕事だ」と思うか。それとも意味を問い直すか。我々日本人は、もっともっと問い直すべきなのです。

 

Googleと問い直し

 

「問い直し」はデザイン思考やDXでも、初期に導入すべき考え方です。本来的な意味を問い直して、それまでの経年劣化した意味性を見直していく作業です。Googleはそもそも「知とは何なのか」という問いを創業時に立てています。

 

ライターの藤田さんいわく「知とは?」をGoogleが紐解くと「賢い人が参照している人が、賢い人である」という答えに突き当たりました(創業時)。つまり、あなたが興味深いホームページを見つけたとき、そのホームページからリンクを張られているホームページこそが、もっともっと知的なホームページであると。さらにそのページが参照しているページはさらに…というふうに、インターネットの仕組みの上で「検索」と「ハイパーリンク」を両立させ、検索エンジンを作ったのでした。

 

DXを目指すなら、もっともっと問い直しをすべきです。業務の本質にたどり着き、意味を問い、そして確信とともに答えを得てください。すべてはそこから始まります。

 

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ライター藤田は、ウニ屋の娘です。創業者である母親が国の専業主婦1円起業枠でゼロから立ち上げた北海道根室市のウニ屋の娘で、ディスカッションを楽しく学びある記事に仕上げます。

 

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