デジタル庁の家賃7000万円はDXの敵。諸悪の根源

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ビジポコ編集長の河上です。

自治体は常に、「いざとなったら民間に頼ればなんとかなる!」という想いを抱いています。民間活力、というやつです。

 

私はこの『民間の力を活かして』は、論理破綻していると感じます。

そして、鳴り物入りで誕生したデジタル庁。その家賃が月7,000万円と報道されていました。年間8億円以上です。

 

DXとは、デジタル前提ですべてを作り替えることにあります。一部だけデジタル化しても、混乱を招くだけであり、とくに役所においては管理が複雑になるだけなのです。

 

今回のビジポコは、自治体を例にしながらデザイン思考で考えていきます。

民間活力の論理破綻

 

なぜ民間活力は破綻しているのでしょうか。それは受託する民間側にも利益が必要なので、20%の利益を見積もるとして80%しか力を発揮してくれないからです。つまり8割しか力が活用されず、下請けに流れれば流れるほど取り分を取られて“活用“の割合が減っていきます。

 

しかし、お役所の人はこの外注化をコストカットだと言います。コストカットをする場所を間違えているのでは?と私は思います。なぜなら、本当にコストカットしたいなら、止めれば済むからです。

 

たとえば公民館を考えてみます。維持費が大変で、講座開催に自己負担をお願いするようになるとします。公民館で開催されているヨガ教室に負担を押しつけたら、人は来るのでしょうか? 無理に残そうとして財政赤字で橋が作れない、となるのは本末転倒ではないでしょうか。

 

私はコストカットしたいなら人が来なくなった公民館はつぶしてもいい、とすら考えます。

 

ほかにも、和歌山市では水道管が破裂して費用負担が大変なことになりました。この手のトラブルが起きたとき、職員の給与を一律カットして対処しようとする地域すらあります。能力の高い職員が辞めてしまい、そうではない人達ばかりが働いていたらまさに地獄。これは切るところが明確に間違っているのです。

 

人口減少していてる・・・といっても

 

今の自治体の課題は多くの場合、人口減少だといえます。

少子高齢化の日本において、地域の人口が減っていくのは自然の流れ。これからは各自治体で住民の取り合いが起こります

 

ただし、行政職員の方々は、市民(または区民)イコール「自分の地域に住んでいる人」と定義しており、その人達向けのサービスを日々提供しています。この問題が何か、わかるでしょうか?

自分の地域に住んでいる人達に向けたサービス提供だけでは、ビジネスでいうところの新規顧客、すなわち新しい住民を取り込めないのです。

 

これでは外の人達が「引っ越してまで住んでみたい!」と思えません。住民という存在は、一定の割合で引っ越したり亡くなったりして出て行きます。そこで新規の住民がやってこないと、人口は当然ながら自然に減っていきます。

 

これを「人口減少だ!」と騒いでも仕方ありません。なぜなら、新規顧客が来ない時点で、正しく人口減少しているからです。

 

デジタル前提で作り替えと、一部デジタル化は異なる

 

またDX化の波は役所にも押し寄せていますが、ここで見られるのが「デジタル化」と「デジタル前提」は大きく異なるという点です。アナログの一部をデジタル化すると、より煩雑になってしまうのは意外と気付かれていません。

 

たとえば「契約書をPDF化しましょう」といえば聞こえはいいですが、一部をデジタル化するだけではプリンタで印刷してペンとはんこで署名して、スキャナで取り込んで、原本とデータを管理することとなります。今度はプリンタとトナー代とがかかる上に、原本とデータを両方保存する場所も必要となります。ますます複雑化し、管理コストが増えるだけなのです。

 

一方、デジタル前提ですべて作り替えるなら「電子契約書」でオーケーとなります。プリンタもインクも紙もペンもはんこも保管場所も必要ありません。

 

デジタル化とデジタル前提を混同したまま進むと、DXもデジタル敗戦の道をくり返すだけになってしまいます。FAXをPDFに置き換えたところで、何も変わらないのです。「脱FAX」

「脱はんこ」などの目標そのものが、あまり知的な行為とは言いがたいのです。中途半端なデジタル化は、何の薬にもなりません。

 

誰かが言わなくては!

 

DXがデジタル敗戦再びとならないように、何ができるでしょうか。まずは上記のようなことを指摘する人が必要です。民間活用といっても、民間側もビジネスですからベンダー側から顧客を捨てはしません。よって、自治体側から切り捨てていくことが必要ではないでしょうか。

 

「デジタル前提で役所を作り直す」。その理由はより住みやすい町にして新しい住民を取り込むため。100年後も地図に残り続けるため。地元に雇用を生み出すため。同時に、職員さんが自分たちの仕事をいつまでも残し続けるためにも、自治体のDXが必要です。

 

デジタル庁の家賃月7000万円!

 

しかし、その先陣を切っているはずのデジタル庁は、家賃が月7000万円だと報道されています。リモートワークに対応したヤフーが紀尾井町のビルから撤収した後、デジタル庁が居抜きで借りて7000万円払っているのです。

 

参考:「転居2回で家賃10倍 デジタル庁へ急拡大で二重払いも」 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASP7L5754P7LULFA001.html

 

年間8億円以上の家賃。これで「メタバース」などにうつつを抜かしているのですから皮肉が効いています。それよりもむしろ全員をZoomでつないでオフィスから撤退し、年収3000万円の頭脳を25人雇ってデジタル前提を進めれば、もっともっとDXは進みます。

 

不動産というアナログが、デジタル庁にすら残っているのです。土地があり、オフィスがあり、時間を奪い、非効率です。これらはすべて、アナログであるからこそ発生する存在。デジタル庁には必要ないはずです。

 

最後に

 

デジタル庁の家賃月7000万円。これが諸悪の根源ではないでしょうか。アナログな家賃を払い続けたオフィスの中で、一部だけデジタル化にこだわっても、DXにはなりません。そもそも経済産業省がDXを打ち出したとき、ベンダーは歓喜しました。「これでうちのパッケージが売れる!」「チャットボットを作ろう!」etc・・・。

 

DXはデジタルによる変革であり、デジタル前提によるすべての作り替えです。一部だけチャットボットに置き換えてDXだと思っていたら、ベンダーにお金を吸い取られて終わります。その原資は税金であり、何より私たちの明るい未来を食い潰すことになるのです。

 

自治体ですらデジタル前提ですべてを作り替える・・・ビジポコでは自治体DXについても発信していきますので、どうかお楽しみに!

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