ビジポコ編集長に、クライアントワークの神髄を教わろうのコーナーです。
クライアントワークはお客様の夢をともに追いかけ、伴走する仲間になること。一番は自分自身のビジネスを持つことですが、最初はお客様の元で先方の仕事をお手伝いし、自分自身が生計を立ていくのがクライアントワーク。信頼できるお客様とのやりとりは楽しいですし、売上だって安定します。原稿書きやデザインの仕事や動画作成など、スキルが身について安心感にもつながります。
しかし、クライアントワークには問題もあります。顧客に売上をもたらさないと楽しくても永遠に続けていられないのです。いくら自分が「もっと記事を書きたいです」「仕事をください」と懇願しても、ひねりのきいた心理学を学んでも、誠実な営業術を身につけても。お金がないとクライアントも仕事を依頼できないのです。
今回のビジポコは機密に触れない程度にクライアント事例を用いつつ、デザイン思考が何をどう変えどう売上を実現していくのか、お届けします。
【ビジポコの学び】
- 問い直しから始まる
- 私たちは一体、何を売っているのか?
もくじ
作るのは簡単で収益化が難しいオウンドメディアなるもの
スキル販売を本業や副業にする人が増えました。ライター、デザイナー、コーダー、イラストレーター、動画編集、ナレーション・・・。デジタル物作りは難しさもありますが楽しいですよね。
ただ、それだけだとどうしても誰かが切ってちぎって丸めた仕事を、報酬いくらで請け負う立場になります。全体から見て工程が後になればなるほど、流れてくるお金も小さくなってしまいますし、不安定になります。そこで『お金が流れる川上に行こう』という話が出てきます。社長から直で案件を受け、大きな予算を握って『人にちぎって渡す誰か』になるのです。
これは難しいようですが、できる人はできます。Webディレクションをするってことですから。そしてなかでもオウンドメディアのディレクションはハードルが低く、なりやすい割に楽しく安定してどっちゃり稼げてしまう仕事です。
私自身ライターとして「1本3万円で●●について書いてください」と言われるケースもありますが、ほとんどが予算をどかっと預かり売上を立てる案件を抱えています。とてもざっくりした指示しかこないのです。
オウンドメディアは作るのは簡単ですがムダな記事も多く、捨て記事が発生し、私自身がクライアントのお金を捨てさせているような気になってしまって罪悪感もすごいですし、集客の難しさゆえに撤退も多くなるのです。(もちろん成功もありますよ)
長くなりましたがデザイン思考を学ぶ過程で、ただつくって集客してその難しさに悩んでのくり返しだった仕事が、スムーズに集客を実現し売上も顧客満足度も非常に高まりました。
デザイン思考:すべては問い直しから始まる
まず、【問い直して】いきます。一体、自分たちは何を売ろうとしているのか? を問い直すのです。デザイン思考の最初の一歩になります。
プロダクトがトリートメントの場合
たとえば白髪染めのトリートメントを販売しているクライアント を黒子としてお手伝いしている場合、「トリートメントとは何なのか?」と問い直します。お風呂に入って、シャンプーした後、髪の毛に塗りたくって時間をおけばつるんつるんになるボトルに入った液体。それがトリートメントですが・・・。
物理的にはボトルに入った液体を売っている訳ですが、実際は何なのか? それこそAmazonがECを問い直し、Googleが知を問い直し、NIKEが靴を問い直したように、プロダクトとしてのトリートメントを問い直していきます。
ボトルに入った液体を売って、その内実として何を提供したいのでしょうか? どんな世界を作りたいのでしょうか? 実はつやつやの髪を自分の手で作っていく感覚を得ていただきたいのです。慌ただしい日常のなかにあるゆっくりとしたバスタイム。そして自分の手で髪をいたわり、丁寧に塗布して時間が過ぎるのを待つ間を大切にしていただきたいのです。一度では理想の髪になりませんから、トリートメントをくり返すことで髪が修復されていくように、ご自身も癒していただきたいのです。それが、トリートメンを売るとはどういうことなのかを問い直した答えとして手に入れたものです。
すると、表現も変わってきました。ただトリートメントの宣伝に必死になるのではなく、ブランドの想いを言葉できるようになってきたのです。
サービスが倉庫業の場合
一方、サービスが倉庫業で、toBではなくtoC(個人向け)で新規事業を作りたいと思っている場合。「倉庫とは何なのか?」「お預かりを通じて、私たちは何を売っているのか?」と問い直します。物理的には、ダンボールに梱包された荷物が積み上がり空調管理が行き届いた空間で、荷物を安全に守っているだけ、、、といったらだけです。
荷物はお客様にとってとても大切なモノが詰まっています。toCとして個人の荷物をお預かりする場合、何を提供しているか問い直すと、それは【さっぱり感】だと思うんです。
たとえば、モヤモヤしている元カレの荷物。パートナーに処分を迫られたけど捨てられない趣味の品。いますぐは手放したくないけれど、迷っているモノを、気分が落ち着くまで預かります。最終的には処分代行も行って、さっぱりした感覚を得ていただきたいと。
提供しているのは倉庫という場ですが、売っているのは【さっぱり感】になります。断捨離したら気分が向上したとか、そこまでいかなくともモヤモヤが取れて、すごく新鮮な気分になった経験はないでしょうか? 倉庫業のtoC向けとして、そのさっぱり感をご提供することになりました。人生のリスタート体験を得ていただきたいのです。という問いの答えとなりました。
さっぱり感・リスタート体験売りを、編集長河上は「預ける理由を新しく作りだしているので、いいと思います!」と評価してくれました。やった!
どういうことか、もう少し詳しく聞いてみました。
何かの理由→【さっぱり感】→具体的な実現手段
すると編集長河上は、「【さっぱり感】を実現するための具体的な手段のなかで値段や認知度で戦うのか、理由を創造して具体的な手段をブランド化するのか。どこで、どう戦うのかが重要だ」と話はじめました。
「荷物を預ける顧客が、なぜ荷物を預けるのか。人はいろんな理由で荷物を預けます。冬が終わるから夏物と入れ替えるために預ける、アルバムとかしばらく使わないものだから預ける、引越し先の収納が狭いので預ける、のように。これらを雑にまとめると部屋のなかの【さっぱり感】としてまとめられる。【さっぱり感】を具体的に実現する手段として倉庫へ預けたり、断捨離したり、お片付けコンサルの”こんまり”があるわけです。」
「【さっぱり感】の具体的な実現手段で戦うというのは、過去に見つかっていたレッドオーシャン、バトルの激しい世界での戦い方です。今回重要なポイントは何かというと、【さっぱり感】を感じたい理由を創造した点にあります。どういうことか。」
「ヒトが所有するモノは、大きく2つに分けられます。1つは自分で買ったもの。もう1つは、誰かからのプレゼントや自分へのご褒美のようにヒトとの思い出がのったもの。後者の場合、その物を見るたびに思い出が蘇るわけです。しかし、蘇る思い出のすべてがいいものとは限らない。例えば微妙な別れ方をした元カレからのプレゼントとか。そういうものをすぐに捨てられないけど、見ないようにして、思い出すトリガーを部屋のなかからなくす。すべて部屋から出し終わり、物が減りガランとした部屋を振り返ったときに【さっぱり感】を感じる。このさっぱりした部分。思い出を溜め込む容量があいたぶんだけ、新しい思い出や新しい出会いで埋めていけるようになる。そしてそれが埋まったときには、古いものは、ようやく縁が切れて捨てられるようになる。」
「今回は【さっぱり感】を感じたい理由を創造し、それが倉庫で預かるという実現手段に綺麗につながっている。全員が、断捨離やミニマリスト的に物を一気に捨てられないのなら、誰も苦労しない。捨てられない人たちに、預けるという手段を再発見させるのが、重要なのです。」
「こうして”理由”を作ってあげることが、実は新しいマーケット、ブルーオーシャンへの扉を開く鍵になります。」
問い直した結果、表現が変わる
問い直しによって、自分たちが何を売っているのかが明確になり、売り物が変わってきます。売り物が変われば、当然ながらセールストークも変わりますよね。表現もどんどん変化していきます。
結果が累積してある顧客の売上はたった1年で実に15倍へと成長しました。稼いだお金をどんどん事業投資していくクライアント社長さんの考えありきのことですが、デザイン思考の【問い直し】で私たちは何を売っているのか? を問うていくのは非常に大切なプロセスだと感じます。問い直しに成功すれば、表現も変わるのですから。