ビジポコ編集長に既存ビジネスの価値を紐解いてもらおう!のコーナーです。
多くの人が体重で悩みます。そこでダイエットは一大産業になるのですが、衝撃的なテレビCMで人を惹きつけたのがライザップ(健康コーポレーション)です。ダイエット前のだらしない体型と、引き締まったいまの体型。その対比を(大げさなまでに)見せ、ただそれだけを流して、『ライザップに通いましょう!』とは誰も言ってないのに、通いたくなる・・・集客に大成功したCMを展開しました。
今回のビジポコは、「ライザップは何を売っているのか」を題材にしながら、集客について学んでいきたいと思います。集客といってもアイデアが必要で、そのアイデアはどこから生まれてくるのかについてお届けしていきます。
【ビジポコの学び ダイジェスト】
- 大量のレビューから価値観が見えてくる
- ライザップの提供価値は、自分を変える体験
- 価値観から理想像がクリアになる
- 理想と現実を埋めるためのプロダクト
レビューを集めると価値観が見える
もともと、ライザップの会社さん(ライザップグループ、旧:健康コーポレーション)は、ダイエットサプリの会社でした。サプリの販促品として付けたおからクッキーの腹持ちがいいと好評で、おからクッキーを販売するようになった経緯があるそうです。
おからクッキーは爆発的に売れましたが、同時期に登場したビリーズブートキャンプに売上を取られて、紆余曲折を得てライザップで新規事業に成功しています。社長さんは新規事業の達人なわけですね。
ここからは想像になるのですが、編集長・河上によると
「おからクッキーは、藤田さんも買ったように通販がメインですよね。そうなるとたくさんのレビューが集まります。すると、レビューのなかから顧客の成功体験が見えてきますよね。単に『ダイエットに成功した』だけじゃなく『嫌いだった自分の体型を愛せるようになった』とか『一生痩せないと思っていたけれど、変われた自分がいた』とか。もちろん痩せなかったとか、美味しいだのそうでないだの色々なレビューが集まると思いますが、ユーザーの“現在の体験と、理想的な体験“が手に入ります。それも大量に、です。それらから、価値観を抽出していくのです。」
価値観の抽出・・・
価値観に沿った理想像を提供する
河上は続けます。「体験から価値観が見えてきますよね。そして価値観が見えると理想像が見えてくるのです。きっと、ライザップの社長はダイエットの本質を『変わらないと思っていた』人に『自分が変われた』という経験をしてもらえば、ダイエットがうまくいくと考えたのではないでしょうか。
もう少し生々しくダイエットに挫折し続けた人のインサイトを表現すると、何度もダイエットに挫折した人ほど、変われない自分に嫌気がさしています。そんな人に最後の駆け込み寺として、「変われる」ことを約束し、それをはたす。何キロ痩せたから嬉しい、ではなく、自分の体を管理できたこと、意思が体型の変化として現れて、自分自身が変わったように感じることが価値なわけです。
そして、ライザップは抽象的にみればコーチが横についておからクッキーを口へ放り込んでもらってダイエットする仕組みでしかなく、コーチはおからクッキーを口にたたき込んでくれる役目を果たすわけです。もちろん実際のライザップでおからクッキーが売られているということではなく、意味合いとして昔と同じ商売になっているという意味です。」
なるほど!ようするに、
体験:おからクッキーで痩せた
価値観:本当は変わることで自分自身を肯定したいのに、変われないので自分はこんなもんだと諦めている
理想:自分を好きでニコニコした毎日
価値観から理想像が見えてきて、イケてない現実との差を埋めるためにうちの商品(ここでいうライザップのダイエットジム)が存在するのですよ、と訴求すると。
体験をかき集めると価値観が見えてくる
なにごとも、まずは体験をかき集める必要が生じます。たくさんのレビューや、深い顧客体験。これまでビジポコで見たように、デザイン思考ではまず「聞いてみよう」から始まります。顧客候補に聞いてみるのです。「こんなジム始めようと思うのですが、通ってみたいですか?」とか「ダイエットしてよかった!と思う体験を聞いてもいいですか?」とか。
体験を集め、価値観を抽出していくと。
ユーザーヒアリングや取材も価値観抽出のために行えば、より効果的かと思います。ただ人の話を聞いてきて原稿に起こし、アップするだけだとあまりに退屈すぎて誰も読みません。でも、そこから価値観が見えてきたら学びがありますよね。それどころか、体験は価値観の宝庫なのです。
理想像を知り、情報を提供する
ビジポコ編集長の河上は続けます。
「価値観が見えると、おぼろげながら、その価値観を持った人たちの理想像もまた明らかになります。ライザップだったら、「自分を変えるに成功した人たちの、まぶしいぐらいのニコニコした笑顔」です。ライザップはダイエットジムという商材を通じて、「自分なんか変えられないと思い込んでいる人たち(価値観)」の「やった!というまぶしい笑顔(理想像)」を売っています。」
「理想と現実の差を埋めるために、ライザップのダイエットジムが存在しますよと見せれば、それだけで集客につながります。ライザップは輝かしいまでの理想像(ニコニコでポーズをとる人)との対比をCMで見せただけなのです。」
なるほど!
物理的にはダイエットジムを売りながら、実際には自分を変え、やりきった感情を抱いてもらい、ニコニコした毎日を過ごしてもらう、そんな価値を売っているのではないでしょうか。
ビジポコの学び
今回は、価値観を見つける方法の話でした。
- 大量のレビューから価値観が見えてくる
- ライザップの提供価値は、自分を変える体験
- 価値観から理想像がクリアになる
- 理想と現実を埋めるためのプロダクト
聞いてみる、たくさんの体験を集める、価値観を抽出する・・・そしてその価値観に合わせた理想像を作り、現実と理想の差を埋めるプロダクトとして、うちの製品があるんですよと訴えかける・・・。
まず聞いてみないとダメですね。というわけで、ウニ屋のネットショップを担当する私はまず、ウニの注文にショップカードを付けて、ユーザーヒアリングにご協力いただくことにします。アンケートを採ってもいいのですが、実際に買った人たちに対し、どうやってふるさと納税を知り、どのような経緯で根室市のウニを知り、家でどう楽しんで、実際はどうだったのか。体験を聞くところから始めるとします。