『タコピーの原罪』を嫌いでも、仕事として新規事業をするのなら大喜びで読んでいる人に何かを売りにいく

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ビジポコ編集長・河上に聞いてみよう!のコーナーです。

 

社長さんには悩みがつきものです。その悩みを大別すると3つ。「売上が欲しい」「従業員に成長して欲しい」「なんか儲かる新しい商売ないかな」になります。

最後の「なんか儲かるいい商売ないかな~」についてのアンサーが今日のビジポコのテーマとなります。つまり、新規事業です。

 

今回の【ビジポコの学び】

 

  • 新規事業を成功するにはとにかく聞く
  • 聞く姿勢で、価値観を知っていく
  • 価値とは役に立つこと
  • “価値ある商品“とは顧客の理想を叶えるプロダクト
  • 理想を知るには価値観が必要
  • 価値観に合わせた理想像をセットしていく必要がある
  • 理想と現実のギャップを埋めるため、まずは現実がどうなっているか確認する
  • 赤信号止まれを新規事業でも習う必要がある

「なんか儲かるいい商売ないかな~」が新規事業

 

新規事業は「こんな製品(サービス)があったら欲しいと思いますか?」と聞くところから始めるとビジポコで習いました。なぜ聞くのか。それは新規事業では、共感できず相容れない方に対しても商品やサービスを売っていく必要があるからです。

 

人の価値観って多種多様ですよね。世のなかには、漫画『タコピーの原罪』に熱狂的にハマる人もいれば冷笑している人もいるわけです。自分自身が、バズっている漫画に批判的な価値観を持っていたとして、熱狂的にハマっている人に何かを売りにいく必要があります。それが仕事として新規事業をつくるということです(趣味としての新規事業なら、そんなことはしなくてもいいのですが)。

 

そのためには相手の価値観を知らねばならないのです。

 

価値観を知るのに一番いいのが、シンプルに話を聞いてみること。そしてアンケートやレビューを集めることです。デザイン思考は体験にフォーカスするので、どのような体験を持ち、それがどのような価値観から生まれたかの情報が重要になってきます。

 

価値観を否定しても仕方ない

 

たとえば、インターネットで無料で読めて、中身が面白いと大人気の『タコピーの原罪』(今読むには課金が必要です)という漫画がありります。少女同士の対立と、それぞれの生い立ちと、天真爛漫なタコピーの罪(のような何か)が入り乱れて、SNSを中心に熱狂的な人気を巻き起こしました。

『タコピーの原罪』にハマり、興奮して考察している人に対し、「何にそんなに心が動いたんですか?」と聞いてみるのは一つの手です。そこから『タコピーの原罪』を“聖典“としたある種の宗教的なまでの熱狂が見えてきますし、自分がいま見えていない価値観までもが見えてきます。

 

その価値観はもしかしたらいじめられっ子への共感かもしれないし、誰にも救いがない悲劇性に惹かれカタルシスを感じたのかもしれないし、みんなが不幸になっていく絶望感を神の視点で見られる全能感かもしれません。聞かないとわからないのです。

 

聞く手段として、これが仮に映画ならその場で聞けばいいだけですが、勇気がいりますし変質者と思われる可能性も少し…。それならSNSで声かけしてボイス機能で話を聞いたり、アンケートサイトを利用して話を聞いたりなどの手段もあります。

 

仮にあなたが『タコピーの原罪』を嫌っていても、相手の価値観を否定してもしょうがないのです。自分とは異なる価値観を持った人であっても、売りに行くのが新規事業ですから。それに、聞くのはタダです。

 

デザイン思考は徹底的に体験にフォーカスする

 

改めて、なぜ聞くのか。それは「大外ししないためです。」と編集長河上はいいます。シリコンバレーで切磋琢磨するベンチャーが新規事業に失敗した一番の理由は『ユーザーにとって価値のないサービスを作ってしまった』から。

 

CB Insights(https://www.cbinsights.com) / The Top 20 Reasons Startups Fail November 6, 2019

 

 

仮に「なんか儲かるいい商売ないかな」と思っても、全然引き合いのないプロダクトを作ってしまって在庫に囲まれて寝るのは絶対に避けたいですよね。在庫の山を作ってしまう前に、シンプルに聞けば欲しいかどうかわかったはず。

 

聞いてどうするのか。「デザイン思考では体験にフォーカスします」(河上談)から、体験を聞くのです。体験から価値観が見えてきて、購買につながる『理想』も見えてきます

 

シリコンバレーでの失敗の累積は『顧客にとって価値のないものを作ってしまった』ですが、価値とはオックスフォード辞書によると「どれくらい大切か、またどれくらい役に立つかという程度。またその大切さ。ねうち」と定義されています。つまり、役に立つのが価値です。

 

「聞いてみる」からどんな価値観が見えてくる?

 

個人的な話ですが私は1980年代、10歳だった小学生の頃、母の日にカーネーションをたたき折ったことがあります。実母があまりに不憫だったからです。フルタイムのワーキングマザーである母は、ワンオペで二人の子どもを育てており、同時に自営業の父が商売下手で家計のお金を持っていくという厳しい状況にありました。

 

しんどい毎日のなか、私は「お母さんはたった1本のカーネーションでまたつぎの1年、働きまくるの?」と子どもながら猛烈に腹を立て、カーネーションをたたき折りました。

 

それは私なりの連帯を示していたわけですが、行動としては母の日にカーネーションをたたき折る子どもな訳で、当然めちゃくちゃ叱られました。「母性とか母の日とか、女は花やっとけば喜んで働き続けるだろ」という母の日の欺瞞を子どもながらに見て、なんだかくやしかったのです。ただ当時の私は語る言葉を持たなかっただけなのです。

 

でも、仮にそこで、まわりの大人から子ども時代の私に対し、「なぜカーネーションを折ったの?」と、「価値観を聞いてみる」働きかけがあれば、ある種の価値観が見えてきたはずです。

 

子どもだった私はカーネーションに託されたワーママへの抑圧を感じ取っていたわけですから。行動を非難しても仕方ないのです。価値観を知る必要があります。

 

現代に戻ってビジポコでもいまいくつかの「聞いてみる」プロジェクトが平行して進んでいます。

 

  • ふるさと納税は誰が買っているのか(ウニ屋の集客)
  • ウニを買うときどんな体験をしているのか(ウニ屋の集客)
  • 引っ越しをするとき、何が決め手になったのか(自治体DX)
  • ちょっと怪しい品をどこで買っているのか(新規事業)

 

3つめの「引っ越しをするとき、何が決め手になったか」はアンケートとして1000件取得しています。回答として「引っ越ししたらお金がもらえるから」「家を建てたから」「実親からDVを受けたため内緒で引っ越す必要があった」など、色々見えてきます。

 

編集長の河上は自治体の職員さんに助言するとき、もちろん「引っ越ししたらお金をもらえるよう大金をどんどん積みましょう」とはいいません。「子どもの健康を守るための補助があったらいいなという価値観」から、「隣町の歯医者に、『お子さんのために払ったその治療費、XX市にお住まいなら全額負担します』と書いたビラを置いてもらうのはどうでしょうか。」といった施策を導き出すのです。そうやって、隣町の歯科医院とそこをあえて選んでいるお客さんとの関係性を大切にしながら、街への引っ越しを促すのです。(ちなみに、河上はいま愛知県南知多町の町長の相談役という謎なことをやっているみたいです)

 

引っ越しと新規事業がどう関係あるかというと、引っ越しは自治体にとっては新規顧客の集客的意味を持ちます。自治体の職員さんは一生懸命で真面目な方が多いですが、既存の住民に対するサービスに注目しがちです。しかし民間と同じで新規集客ができないと、引っ越しして自治体から出て行く一方で尻つぼみです。このままだと、職員さん達の職場が消滅します。

 

ビジポコの学び

 

「なんか儲かる仕事ないかな~」は新規事業。

 

「成功するにはとにかく聞く。聞く姿勢で、価値観を知っていく。価値とは役に立つことで、“価値ある商品“とは顧客の理想を叶えるプロダクトです。理想を知るには価値観が必要で、価値観に合わせた理想像をセットしていく必要があります。その理想と現実のギャップを埋めるため、まずは現実がどうなっているか確認しなければなりません。」と河上は教えてくれました。

 

―――「まず聞いてみる」から始める―――

 

赤信号止まれは親から習いますが、新規事業もまた赤信号で止まらなければなりません。事故(新規事業の失敗)を避けるためにも、デザイン思考の専門家・河上がおります。

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ライター藤田は、ウニ屋の娘です。創業者である母親が国の専業主婦1円起業枠でゼロから立ち上げた北海道根室市のウニ屋の娘で、ディスカッションを楽しく学びある記事に仕上げます。

 

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