ビジポコ編集長・河上に新規事業の作り方を習おうのコーナーです。新規事業というと新しい事業を検討する際、机の前で延々と悩んだり、「これならイケる!売れる!」でつっぱしってしまったり、さっぱり売れなくて閑古鳥が鳴きそのうち「買わないお客が間違っている」と世間を否定しだしたり、、、ってことがありそうな気がします。
ライター藤田の父親も「儲かりそうなビジネスを考えるのが楽しい」とニコニコしながら教えてくれますが、実際は全然うまくいかず・・・妄想だけならよいのですが、お金がどんどん出ていくのは誰にとってもつらいです。
しかし、それは個人事業主や中小企業にかぎらず、プライム市場に上場している立派な企業さんや、新しいビジネスを生み出す聖地とも呼べるアメリカのシリコンバレーでも、同様の過ちをおかしてしまっているようです。
理由は、新規事業の作り方や赤信号止まれなどの見えないルールブックを手にしていないから。そして、法人と人類の関係性を読み解くと、少し見方が変わった新規事業の作り方が現れ出てきます。
今回は、編集長であるコンサルタント・河上が東京商工会議所で行ったセミナーを元に、新規事業の作り方を2回に渡ってお届けします。
【ビジポコの学び】
・新規事業は奇をてらったビジネスをするわけではない
・顧客にとって価値ある何かを売る
・ハリウッドもTwitterも聞くから始めた
もくじ
新規事業への誤解
『新規事業』と聞くと、何か目新しい事業をするように感じられてしまいます。見たことのないサービスを打ち出し、奇策を練って集客し、メディアに取り上げられ、チヤホヤ・・・みたいな愚かしい妄想を私などは持ってしまうのですが、実は失敗する理由は解明されていると河上はいいます。
河「アメリカにシリコンバレーという新規事業の聖地みたいな場所があります。そこでローンチされた事業のうち失敗した事業をまとめた調査があります。それによると、、、
河「一番の失敗の理由は『顧客にとって価値がなかった』です。つまり、「儲かる!」&「できる!」でつっぱしってしまい、『価値がある!』を忘れてしまったと。誰も喜んで買ってくれない物やサービスを売ってしまったということです。」
事業は【顧客にとって価値がある】【自社で実現できる】【利益が出る】の3つの円が重なるところが売れ続けるプロダクトです。
各ポイントで大切なこと
【顧客にとって価値がある】毎日顧客候補と会話する、自社の都合は無視する、顧客が喜ぶなら自分の価値観は無視する
【実現できる】組織として成長する、1円でも安く実現する方法を考える
【儲かる】下請けから脱し完成品を想像する、市場をすべて取る戦略を考える、資本主義で勝っていく
この3点で、
河上「さらには【顧客にとって価値がある】からスタートします。必ず顧客にとって価値があるから始めないといけません。」
「できる!」から始めるケースは陥りがちな気がします。個人レベルでも「自分はこのスキルがあるからこの仕事を始めよう」と考えますし、大企業でも「自分たちはこれができるからこの事業を検討しよう」となりがちなのだそうです。
そもそも何を売るべきか、それは価値ある何か
価値ある何かを売る―。価値とは「お客様が喜んでお金を払って買ってくれるほど、とても悩んでいた課題を解決する何か」です。お客様の課題を解決する何か、それを提供し対価をいただくのが事業です。新規事業を考える際も、まず「価値がある」から始めなければなりません。
なお、編集長河上はプライム市場に上場している4社+日本最強の自動車の合計5社を顧客として持ち、地方自治体で1市1町の相談役として陰で日本を支えています。このビジポコの由来は「ビジネスをポコポコ生み出せる会社になりたいな」という大手企業の方のひとことから、ビジネスをポコッと生み出す『ビジポコ』です。
そんな“日本の顧問”が言うには、大手企業でも「できる!」と「儲かる!」だけでつっぱしり、「価値がある」を置き去りにして資金がどんどん溶けていくケースは往々にしてあるそうです。
自分が作りたいモノ、売りたいモノを売らない
では、価値あるものを売るにはどうしたらいいのか。それはシンプルに「聞く」ことだと河上は言います。自分が売りたいモノ、自分なら欲しいなと思うモノを売らず、人様が欲しいと思うモノを売るには、聞いていくこと。たとえば、ハリウッド映画も、そして今多くの人が使っているSNSも、聞くから始めたというのです。
どんな映画なの? に答えられる脚本を
河上「最もうまく世界的に「聞く」を実行しているのがハリウッド映画を作っている人たちです。ハリウッドでは映画を作るときに脚本を書く前、まさに書く前に、どんな映画なの?という質問にひと言で答えられる回答を作り込んでから脚本を書くプロセスに移るそうです。」
街中を歩いている人達に、「こんな映画があったら見ますか?」と聞きます。たとえば『ダイ・ハード』というアクション映画がありますが、ひと言で説明すると下記のような映画です。
「警官が別居中の妻に会いに来るが、妻の勤める会社のビルがテロリストに乗っ取られる。それと戦うアクション映画なのです、見たいですか?」
と聞きます。興味を持たれたら、それからはじめて脚本を書くところに入っていく。私たちが友達を映画に誘うとき、「どんな映画なの?」と聞かれ、答える感じです。今年公開される『ジュラシックパーク』なら、「恐竜が出てくるパニック映画なんだけど、どう?」と。
河上「まずはたったひとつの質問「どんな映画なの?」に答えられるようになる。これがわからないままに脚本を書くと、それは脚本を書いている本人でさえも何を書いているのかよくわからないナニカになります。そんな何かわからないものでは、人に聞いてまわることはできません。よくわからない映画を見たい?と質問されても、聞かれた人も困ります笑」
Twitterも最初は聞いてまわった
河上「映画以外にWebサービスでも同じです。たとえば日本の総理大臣や米国の大統領も使っているも「聞く」から始めています。最初に「テレビを見ているみたいに、今の感想をつぶやけるサービスがあったら使いますか?」と聞いてまわっていました。
聞いてまわるだけなら1円もかからないですし、まず「見たい!」「使ってみたい!」と言ってもらえるなら、そこから次にやるべきことが見えてきます。逆に言えば、興味を持ってもらえないものを作って売り出しても、ゴミの山になり借金を抱えるだけです。」
価値ある物を買っていただくには「聞く」から始める
「聞く」は0円ですごいパワーを持ちます。聞かずに妄想から始めると迷走します。ハリウッド映画(つまり、売れる映画)を生み出し、Twitter(つまり、大勢が使うアプリ)を生み出したのが、最初に「聞く」という行為だったのです。
聞かずに机の上で考えた事業を展開してしまうと、売れなくて広告費をかけ、どんどんお金を失っていきます。お金ならまた稼げばよいのですが、時間は失うと取り戻せません。そうした損失という名の事故を避けるには、赤信号止まれを覚える必要があるのです。
一方で、「聞く」行為はどちらかというと能動的で青信号ススメの側面があります。自動車教習所でも赤信号止まれを習うだけでは車道に出られませんし、それだけを教えて教習所がお金を取ることもありません。能動的な行為「聞く」の後でどうするか、それは「価値観を抽出する」のだと河上は言います。
人が持つ価値観と、同じ価値観を持つ人たちが物理的にどこに集まっていて、どんな行動を取っているのか。そこを掘り下げられれば、そのときこそ“価値“が見つかり、人が「欲しい!」「買いたい!」という結果、つまり新規事業の成功につながるのではないでしょうか。
ビジポコの学び
新規事業は奇をてらったビジネスをするわけではなく、「顧客にとって価値がある」状態を目指して、そこからスタートします。さらに「価値がある」に加えて「自社が実現できる」「利益がでる」の3つの円の重なるところが、成功する新規事業のアイデアです。
アイデアを形にするには、妄想で考えず、聞くから始める・・・実際に聞くと、価値が見つかります。前回の原稿であったように、聞くと意外な価値観がみえてくるのです。
ハリウッド映画作りでも脚本の前に「聞く」。Twitterも構想時点で町に出て人に「聞く」。です。知らない人に聞くのはドキドキしますし、「いらない」と言われたら自分を否定されたようで傷つくかも知れません。でも、0円なんです。膨大なリサーチの準備と予算をかけるより、まずアイデアを考えたら顧客候補に聞いてみましょう!
【ビジポコの学び】
・新規事業は奇をてらったビジネスをするわけではない
・顧客にとって価値ある何かを売る
・ハリウッドもTwitterも聞くから始めた