リスキリングを通じ全てが数字で管理される世界がやってくる

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リスキリング(学び直し)」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。

政府も推奨し、今後5年間で1兆円を投じると高らかに掲げられたリスキリング。

組織に勤める40代以降を中心に今、学び直しブームが来ようとしています。

 

しかし、リスキリングをただ盲目的に「次のバズワードだ」「俺は関係ないや」と表面的に受け流しているだけではリスクだと、当サイト・ビジポコ編集長・河上は指摘します。

 

リスキリングはリストラの前兆かも?

すべてが数字で管理される世界って怖くないですか?

 

そう考えると色々なことが見えてきます。会社も社員もどう振る舞うべきなのか。一生懸命やらないとリスキリングは怖いですよ、という話をお届けします。

リスキリングはDX時代の人材戦略とされるが・・・

 

今や猫も杓子もDXです。

経済産業省の定義によりますと、DXとは以下のように定義されています。

 

DXの定義

 

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

参照:経済産業省 デジタル・ガバナンスコード2.0

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf

 

そして、同じく経済産業省の定義はさらに続き、DXの世になると人材戦略も変化するため、リスキリングは下記のように定義されます。

 

リスキリングの定義

 

「ビジネスモデルや事業戦略が変わるなら、人材戦略も必然的に変わる。

DX時代の人材戦略=リスキリング

 

リスキリングによって、デジタル技術の力を使いながら価値を創造できるように多くの従業員の能力やスキルが再開発される」

参照:経済産業省 リスキリングとは

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/002_02_02.pdf

 

とされます。

 

DX時代の人材戦略がリスキリング。企業が市場環境の変化に対応し、激しい競争を勝ちぬくための改革・変革がDXで、そのために人を変えねばならない、そのためのリスキリングという位置づけです。

 

リスキリングは会社に残りたい場合には正解

 

「リスキリングは、会社に残りたい場合は正解ですね」

 

と河上はまず指摘しました。

 

会社員としていつまでも雇用を維持していただきたい、悪く言えば会社にしがみつきたい場合は、今のスキルの上にre-skillしてスキルを足し(あるいはかけ算し)、技能を学び直して成長していく以外の道は残されていません。どのような人も時間の経過とともにスキルが陳腐化します。

社会の技術的進歩はとても早く、20年前に大学で学び、その後現場で実践してきた技術だけではとても立ちゆかなくなることが明らかになり、無理だと全国的に諦めがついた結果が「リスキリングの大号令」だからです。(気がつきましょう)

 

20年前に大学を出て、当時は最先端の考え方や思想を持っていた方も、いずれは”遅れた人”になっていきます。だからこそリスキリングは大切だとされます。考え方を現代にアップデートし、今の会社で通用する人材になること。それが首にならないためには重要だからです。

社員には功績を残す義務がある

 

そこで、社員は何らかの功績を残し、会社に「私は必要な人材です」と示す必要が生じます。功績といっても社長賞を取るとかそういったものではなく何らかの形で「努力しています」と明示する必要があるのです。

 

河上「努力の跡が垣間見えない場合、とても危険です。会社から異動を通達されても本人が拒否する場合も同様だと思います。その場合、何が起こるか? リストラされる時の要素が大量に仕上がるのです。だからこそ、リスキングは怖いのです。」

 

リスキリングを邪推しないのは危険

 

リスキリングがリストラの前兆に・・・これは邪推です。

 

しかし「邪推しない方が危険です。」と河上は指摘します。リスキリングの対象者になり、「学び直しを頑張りましょうね」と人事が優しく言ってくれるうちは、会社にも本人にも本人のスキル的にもまだまだ余裕があるということです。

 

邪推しない方が危険なのは、リスキリングがリストラ、つまり人生に深く関わってくる雇用問題だからです。

解雇の4要件とリスキリング

 

日本企業はそう簡単に正社員を解雇できません。

『労務安全情報センター』の「整理解雇の4要件」によると会社側から社員を解雇する場合には、以下の4つを満たす必要があるとされます。

 

1 人員整理の必要性

2 解雇回避努力義務の履行

3 被解雇者選定の合理性

4 手続の妥当性

 

参考:労務安全情報センター

http://labor.tank.jp/kaiko_etc/seirikaiko.html

 

つまり倒産など差し迫った必要性にかられ、首にしないための努力をし、合理的かつ公平な人選であり、さらに手続きも無謀なプロセスではないこと。

 

これらの努力をしてはじめて合法なリストラが可能になります。これらを実証するのは難しく、日本では正社員の解雇は極めて困難とされ、無理矢理クビにしようとしても裁判を起こされたら労働者側が勝利する事例はたくさんあるのです。

 

リアリティがないかもしれません。しかし、

 

  • 業績不振で人員整理の必要性があると証明できる(DXする理由)
  • クビにしないため全社を上げて努力したと証明できる(社員向けのリスキリング機会の提供)
  • 業務命令を無視し、サボっているかどうかすべてがデータで取れて、クビにできる人間は誰なのか合理的な人選ができる(web動画での研修なら再生時間や回数すら把握可能)

 

だと、どうでしょうか。一気に身近な話になってきたのではないでしょうか。

 

悪意を持ってリスキリングを使おうとすると?

 

会社側が最大限努力したと証明できてしまう場合はどうでしょうか。われわれはリスキリングをどうとらえるべきでしょうか。

 

会社が経営危機に準じるぐらいの状態にあり、社員を解雇しないために学び直すチャンスを与え、40代、50代という給与が高くて動きの鈍い社員を人選し、データを根拠に合理的かつ丁寧に説明できれば・・・リストラは不可能ではないかもしれないのです。

 

そしてリストラのため、前兆としてのリスキリングと位置づけると、リスキリングブームがとても恐ろしい側面を表します。業務時間中に映像を裏で流し、ビデオを巻き戻しも一時停止もせず、やっているフリをすれば、そのデータは全て人事部に把握されます。

 

もう一度、整理解雇要件と、リスキリングの文脈を見てみましょう。

 

1 リスキリンングやDXをやり経営改善に務めたが、人員整理の必要性が残った

2 解雇回避努力義務の履行として、教育機会の提供や教育結果に基づく新たな仕事の提示を行った

3 webでの受講履歴から成績不良者と、再生回数の少ない人間を被解雇者として選定した

4 あとは、手続きを進めるだけ。

 

webでの研修はここまでのことが何の手間もなくできます。成績と、再生時間や再生回数でソートをかけるだけで、クビにしても問題にならない人のリストが出来上がります。

 

1兆円やバズワードに浮かれている場合ではないのです。

 

リスキリングはDXに沸いたIT業界と同じ・・・?

 

河上はいいます。

 

「経済産業省がDXを掲げたとき、IT業界は歓喜しました。『これでITツールがたくさん売れる!』と」

 

今でこそDX、DXといいますが、実際は政府お墨付きでITベンダーへの利益誘導だと解釈されても仕方ないぐらい、チャットボットや自動化ツールが売られるようになりました。

 

DXは変化なのに、チャットボットや自動化ツールで何か変わったでしょうか? ITという手段ありきで進めても、一部にITを導入して終わります。部分的なIT導入はむしろ全体の仕事を増やしてしまうのは、このビジポコでもお伝えした通りです。

 

DXをITの一部導入としかとらえられないと、かえって全体の仕事が増えるのと同様、リスキリングも単なるITスキル向上とリーダーシップに振りすぎると、ついて行けない人員を解雇するためだけのものになります。

 

悪用されるのか、それとも自分がうまくこのリスキリングの機会を使うのか。

”変わり目”になるので、うまく使う側になるようにしましょう。

 

リスキリングはあくまでDX時代の人材戦略であり、DXとは激化する市場競争を勝ち抜くため、『デジタル前提』ですべてを作り替えることです。作り替えた新しい組織、新しい会社にとって役に立たないのであれば、席がなくても当たり前です。

 

リスキリングがwebで進められている会社にお勤めのあなた。

数字ですべてが管理される世界・・・。デジタル時代のリスキリングはすべてがデータで管理され、とても恐ろしい側面を持っているのです。好機とするか、悪夢への道を歩むかは、あなた次第です。

 

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